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2018.12.17(月)

特別企画:Scan初代編集長インタビュー(4)B2Bメディアは八方美人では生き残れない

本誌Scanの編集長に上野宣氏が新たに就任したということである。なるほどと記事を読んだが、はたと気がついた。

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本誌Scanの編集長に上野宣氏が新たに就任したということである。なるほどと記事を読んだが、はたと気がついた。

情報セキュリティ専門誌ScanNetSecurity編集長に上野宣が就任https://www.netsecurity.ne.jp/1_14800.html

そういえば、これまで本誌には、編集長という肩書を持つ担当者は一度も存在しなかった。「新たに就任」という表現は、言い得て妙である。もともといなかったのだから、「交替」ではないわけだ。しかし、十年以上の歴史を持つ媒体に発刊以来編集長がいなかったというのもすごい話である。長らくこの媒体に寄稿させていただいている者として、上野氏の勇気を讃え、今後の活躍を願ってエールを送りたいと思う(ほんと)。

そこで今回は、編集長という肩書は無かったものの、Scan誌を創刊し、媒体運営方針を確立するなど強い影響を与えた、Scanの発行会社の元社長である、セキュリティ情報界の元祖武闘派 原隆志氏にメールインタビューを行った。テーマはずばり「セキュリティ情報サービスで儲ける方法」である。なお、このコラムは、氏へのインタビューに基づくフィクションであり、登場する人物、組織、固有名詞は全て架空のものです(ということにしておかないと差し障りがありますので)。

─Prisoner Langley(以下Langley):その他にコストと関係した体制上の特徴はありますか?

原隆志氏(以下、原):補足になりますが、媒体の価値は編集スタッフによって大きく変わるという誤解が広く蔓延しているような気がします。媒体の価値の定義は、難しいんですが、利益率(売上じゃなく利益)を高く維持することが媒体の価値という強引な定義を許していただければ、給料の高い編集スタッフは、それだけで意味のない存在です。編集長だけ、ちゃんとしていれば、いいんです。場合によっては、丸ごとアウトソースでもいいと思います。紙の媒体の編集部では編集長以外、外部スタッフとかありますよね。

Langley:そうなんですか? 記事としての品質の高い、いい記事が無いと読まれなくなるんじゃないですか?

原:いい記事の定義は難しいのです。「いい記事」って何でしょう? では、逆に訊きますが、あなたが日頃チェックしているネットのニュースで誤字脱字があったら、読まなくなりますか? もちろん、そこでしか読めないニュースで、しかも業務上必要なものだとした場合です。

Langley:そりゃあ、読むと思います。

原:文章が多少下手でも、読むでしょう?

Langley:読みますね。ただし、情報のジャンルによるとは思いますが。

原:誤解を恐れずに言ってしまえば、誤字脱字なんてOK、それよりも「知らなかったではすまない」情報が重要だという考えで私は媒体を運営していました。

「Scan Security Wire」は業界誌です。極論すれば、誤字脱字があって、文法がおかしくても、そこにだけ載る情報があると思われている間は、必ず読まれると思います。

時事通信とか、共同通信とか、あるいはプレスリリース、記者クラブへの投げ込み、そういったものをベースにメディアを作ると、いろんなところに同じ記事が出ます。そうなれば、読みやすいところ、早いところが好まれるのは道理なのです。しかし、業界誌はそうでは無いと私は考えます。

言い方を変えると、文字校正をしても一円も利益に貢献しないということです。もちろん、ある程度の利益が確保できている場合、直接の利益に貢献しないでも読者に役立つことにコストをかけるのは重要だと思います。読者の信頼を得ることは間接的に売上に結びついてきますからね。

しかし、利益を確保して媒体を存続させ、当誌にしか載らないセキュリティ情報を届けることよりも、優先されることは他にないと思っていました。

Langley:極論のように聞こえますが、単に事実を言っているだけなのですね。

原:はい。コンシュマー向けの媒体は、全体的な完成度が高くないと読んでもらえません。しかし、業界誌、ニッチなB2B向けの媒体は、全体的な完成度ではなく、たったひとつ「知らなかったでは、すまない情報が載ることがある」ということが大事だと思います。

Langley:以前、どこかで話されていた、価格と完成度の逆比例ですか。

原:そうです。よくご存知ですね。

ほとんどの媒体は、値段が安いものほど、全体的な完成度を求められるようになります。文庫本は誤字脱字、落丁などゆるされませんし、ちょっとした装丁やキャッチコピー、イラストの違いで売れ行きが多く変わります。

ラノベなんかカスみたいな内容でも、絵師が良ければカバー買いされたりします。逆に、いい内容でもカスみたいな絵師がつくと全然売れなかったりします。B2Bでは、そんなことは滅多にありません。それができるなら、セキュリティベンダは、製品にガンダムとかエヴァンゲリヲンとかのロゴや声優の声をつけますよ。

ことほど左様に、安くてたくさん売らなければならないほど、完成度とか、付加価値とかを考えなければなりません。値段が高くなれば、それに応じて、より全体的な質の向上があるだろうと思う人が多いですが、実際には、その逆です。

一定以上の価格の本は、装丁もいい加減で、誤字脱字も多かったりします。シンクタンクが作った十万円以上する調査レポートなんて、今時同人誌でもこんなひどい装丁はないという装丁で、誤字脱字満載です。それで成り立っています。

ソフトウェアもそうです。コンシュマー向けのソフトは、全体的な完成度が求められますが、業務用の数千万円の高額パッケージソフトは、一部日本語化されていなかったり、実装が遅れている機能があったりとかでも、まかり通っています。

Langley:安いコンシュマー向けは、完成度高い八方美人でなければならず、ニッチに絞ったB2B向けは一点豪華、極端に言えばそれ以外は貧弱でいいということですね。


※本記事は有料購読会員に全文を配信しました

(取材協力:原隆志/取材・文:Prisoner Langley)

【関連リンク】セキュリティコラムばかり書いているLANGLEYのブログhttp://netsecurity.blog77.fc2.com/
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