Langley のサイバーノーガード日記 霞ヶ関的無限再生産業務 【後編】 情報セキュリティ政策会議はシーシュポスの神話? | ScanNetSecurity
2024.04.25(木)

Langley のサイバーノーガード日記 霞ヶ関的無限再生産業務 【後編】 情報セキュリティ政策会議はシーシュポスの神話?

●霞ヶ関的無限再生産業務 その2〜永遠に実態に追いつかない指針の見直し

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●霞ヶ関的無限再生産業務 その2〜永遠に実態に追いつかない指針の見直し

 お役所的仕事のポイントは「いかに長く続けられる仕事を作るか」である。短期間で問題解決するなど、愚の骨頂。そんなことをしたら、自分自身の存在意義を否定しかねない。永遠に続く仕事の決定版のひとつがこれである。

指針の見直しについて
http://www.nisc.go.jp/conference/seisaku/dai21/pdf/21siryou0601.pdf

 情報セキュリティ政策会議の資料に、「指針の見直しについて」というのがあった。ああ、ちゃんと見直しという発想もあるんだ、などと一瞬でも思った筆者が間違っていた。

 この見直しには、筆者のような凡人には予想もつかないトリックがあった。見直しに1年間かかるのである。当然、そんな時間をかけたら、実態にそぐわなくなる。実態にそぐわないなら、再度、指針の見直しが必要である。かくして、指針の見直しは毎年行われることになる。

 お見事、無限再生産業務が、またひとつできたわけである。

 懸命なる読者貴兄におかれては、おわかりと思うが、この指針は永遠に1年のタイムラグで実態を追っているので、どんな時でも役に立たない時代遅れのものなのである。これほど、明快に役に立たないものを毎年作るというのは、ある意味、すごい。

●情報セキュリティ政策会議は、シーシュポスの神話?

 シーシュポスの神話というのをご存知だろうか?

 ギリシャ神話の中の話である。シーシュポスは、いろいろあって神様に罰を受けることになる。彼は重い岩を山の上まで運ぶのだが、山頂に運ぶと岩は転がり落ちて、また麓まで降りて運び上げなければならない。永遠に続く無為な作業を行うという罰である。

 この話をベースにして、カミュという作家がとても哲学的な「シーシュポスの神話」という本を書いた。その現代の官僚組織的解釈が「情報セキュリティ政策会議」なのかもしれない。霞ヶ関って想像以上にハイブローだな。

 お役所というのは、哲学的な意味があって、無限再生産業務が好きなのだろうか?

 「第3節 2008年度の情報セキュリティ政策の評価等」という資料がある。この12ページに、「第1次情報セキュリティ基本計画の3年間(2006〜2008年度)の総評」という箇所がある。大変わかりにくい霞ヶ関的日本語が書かれているので、誰か翻訳してほしいのであるが、筆者のつたない読解力で読み解くと、

「金のかかる組織つくりや教育は成果にどんどんやります」
「利権を作れる制度もどんどん作ります」
「成果が出ているものは、より成果を出すために、どんどんやります もちろん、成果はセキュリティ意識の向上とか、見えないもの、役に立たないものも含みます」
「成果が出ていないものは継続的な活動が必要なので、どんどんやります」

ということらしい。

 とここまで書いて気がついた。日本のシーシュポスは、永遠に役に立たない官僚に金を税金を払い続けなければならない国民の方なのだ。

●蛇足 政府機関のWeb改ざんについて

 情報セキュリティ政策会議の資料に「政府機関のWeb改ざんについて」というものがある。

 これが笑える。

 政府関係機関のWebが改ざんされた事態についての整理なわけであるが、書いてあることが、いちいちすごい。

・事例から見えたこと
「緊急対応体制の再検証・見直しが必要ではないか」

…これって、どんな時にでも言える適当コメントの代表じゃないの?

・改善の方策(例)
「土日の緊急連絡体制の再確認(危機管理意識の保持)」
「サーバ、システムの集約(可能な限り管理を集約化)」

… 大学生でも書けるんじゃないか?

 ちなみに、筆者が考えるに、だいたいのとこには、誰も管理していないサーバが存在している。管理する主体が多ければ、全体として管理されないサーバの数は増える。その意味ではサーバの数を減らして集約化するのは、間違っていないと思う。しかし、それでも管理されていないサーバがなくなるわけではない。集約化は改ざん件数を減らすことにはなるが、なくすためには別な方法が必要なはずである。この点では集約化だけでは効果は限定的だと思う。

 いや、筆者は揚げ足取りをしたいわけではない。それもちょっとはしたいけど。

 この資料って第三者的な視点で書いてるけど、この資料書いてるお前が悪いんじゃないの? この資料を書いてる部署が、ちゃんと実効性のある指針を出したりしていれば、こんなことにはならなかったし、なっても連絡、調整が迅速できたんじゃないの?

 こんなどうでもいいような他人に責任押し付けたような資料を、筆者の払った税金で給料もらって作るのはやめてほしい。いや、やってもいいけど、その分、税金を減免してほしい。

【執筆:Prisoner Langley】

【関連記事】
Langley のサイバーノーガード日記 霞ヶ関的無限再生産業務 【前編】 情報
セキュリティ政策会議はシーシュポスの神話?
https://www.netsecurity.ne.jp/3_13341.html

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