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2018.12.17(月)

第29回「ソフトウェア契約に潜むリスクとその法的対策」 平成19年4月経産省発表「情報システム・モデル取引・契約書」(15) ソフトウェア開発委託契約の成否をめぐる判例(商法512条)

●38 前回は、当初から開発委託契約が締結されることなく、システム開発が先行したケースに関する判例を2件ご説明しました。今回は、開発委託契約は存在するものの、当事者間において追加発注・追加受注が行われ、この追加分の開発費用について合意がない場合、すなわち

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●38 前回は、当初から開発委託契約が締結されることなく、システム開発が先行したケースに関する判例を2件ご説明しました。今回は、開発委託契約は存在するものの、当事者間において追加発注・追加受注が行われ、この追加分の開発費用について合意がない場合、すなわち追加分についての合意がない場合にどのように扱われるか、商法512条に関して相反する二つの判例をご紹介致します。

商法512条は、「商人がその営業の範囲内において他人のために行為をしたときは、相当な報酬を請求することができる。」と定めています。「株式会社」は商法の定める「商人」ですので、商人を株式会社と読みかえても差し支えありません。理論上は、商法512条は追加契約に限定されるものではありませんが、ソフトウェア開発委託契約においては、追加契約の局面において商法512条が登場しています。

●39 大阪地裁平成14年8月29日判決「スーパー土木事件」
(平成11年(ワ)第965号 著作権侵害差止等請求事件)
(平成11年(ワ)第13193号 開発委託費等請求反訴事件)

本件は、「スーパー土木事件」と呼ばれる事件で、さながらソフトウェア開発委託契約の論点のデパートともいえるくらい多くの論点を含んでいます。また、それぞれの論点について裁判所が詳細な判断を示しています。ソフトウェア開発委託契約に関する実務に与える影響は大きいです。そこで、商法512条に関わる論点だけでなく、本判決の全容についてご説明致します。

事件の概要は次のとおりです。
(1) 基本要件設計契約
平成8年7月16日 訴外AはY1に対しソフトウェアの基本要件設計作業を委託金額232万7000円で委託した。その後、Y1は、基本機能設計書を成果物として訴外Aに納品し、訴外Aはこれを検収受領するとともに、上記作業の対価を支払った。

(2) 本件開発委託契約
平成8年8月20日 訴外AはY1との間で開発代金2400万円、納期限を同年12月31日などと定めた本件開発委託契約を締結した。

(3) 追加契約
平成8年9月20日 訴外AとY1は、同日付け見積書のとおり、本件ソフトウェアに〔1〕展開図自動作図機能、〔2〕工事、図面、テンプレートの管理方法、〔3〕小数点設定のタイプ別入力機能を搭載する旨の仕様変更の合意を代金300万円と定めて行った(その余の仕様変更の合意の有無については争いがある)。

(4) 契約上の地位の移転
平成8年10月24日 訴外Aの代表取締役であった甲はXを設立し、本件開発委託契約上の地位をXに譲渡し、Y1にその旨を通知しY1はこれを承諾した。

(5) Xによる本件ソフトウェアの複製・販売
平成9年3月ころから平成10年8月にかけてXは、本件ソフトウェアの複製物を合計186本販売した。

(6) Y1による本件ソフトウェアの複製・販売
平成9年6月ころから、Y1は、Y2及びY3を通じて、本件ソフトウェアの複製物を合計47本販売した。

(7) XからY1らへのによる著作権侵害の警告
平成10年10月30日、XはY2及びY3に対し、本件ソフトウェアの著作権がXに帰属することなどを示し、Y2及びY3による本件ソフトウェアの複製、販売行為は著作権を侵害するものであるとして、その停止を求める旨の内容証明郵便を送付した。

(8) Y1による著作権登録
平成10年1月28日、Y1は、本件ソフトウェアのプログラムの著作権者として、財団法人ソフトウェア情報センターにおいて、プログラムの第一発行年月日等の登録を行った。

本件訴訟は、XはY1に対し、著作権の持分に基づく複製等の禁止、プログラム登録の抹消、損害賠償を請求したという「本訴」と、Y1はXに対し、開発委託契約の開発費残代金、ライセンス契約に基づくライセンス料、仕様変更に基づく開発費、ソフトウェアの保守委託契約に基づく保守料の支払い請求した「反訴」の二つの請求から成っています。

本訴訴訟の争点は、以下のとおりです。
1 本件ソフトウェアはXとY1の共有に係る著作物か。
2 XとY1との間の「共有著作権の行使に関する合意」(著作権法65条2項)、又は、ライセンス契約が成立したか。
3 Xの本訴請求は権利の濫用か。
4 Xの損害額。

〔反訴請求の争点〕
5 Xは、本件開発委託契約に基づく残代金支払義務を負うか。
6 Y1とY1訴外Aの間には、本件ソフトウェアを1本販売するごとにライセンス料10万円を支払う旨の合意が成立したか。
7 Xは、Y1に対し追加開発費支払義務を負うか。
8 Xは、著作権使用料の支払義務を負うか。
9 Xは、保守契約に基づく保守料の支払義務を負うか。

各争点に関する裁判所の判断は以下のとおりです。
〔本訴請求〕
争点1 本件ソフトウェアはXとY1の共有著作物か
(1)本件ソフトウェアは原始的共同著作物か共同著作物(著作権法2条1項12号)とは、二人以上の者が共同して創作した著作物であって、その各人の寄与を分離して個別的に利用することができないものをいい、プログラムの著作物(同法10条1項9号)の作成に複数の者が関与している場合において、各人が共同著作者となるためには、各人が当該プログラムの作成に創作的に寄与していることを要し、著作物の企画を立てた者や単なる開発委託者のように、補助的に参画しているにすぎない者は共同著作者にはなり得ないものというべきである。

本件ソフトウェアの開発経緯(〔1〕要件定義、〔2〕外部設計、〔3〕内部設計、〔4〕プログラミング、〔5〕各種試験の実施)において、本件ソフトウェアのプログラムの著作物としての創作性を基礎付けるプログラム言語による具体的表現の作成(内部設計、プログラミング)はY1が単独で実行したものであり、Xは、要件定義及び外部設計の段階で、開発委託者として要望事項を述べるとともに、仕様確定の前提となる資料を提供し、また、本件ソフトウェアの暫定版の受入検査及び検査中に発生した不具合の指摘を行ったにすぎず、Xが、ソフトウェア開発委託契約における発注者としての行動を超えて、本件ソフトウェアのプログラムの具体的な表現に対して創作的な関与を行ったことを認めるに足りる証拠はない。

そうすると、本件ソフトウェアの著作者は…

【執筆:弁護士・弁理士 日野修男】( nobuo.hino@nifty.com )
日野法律特許事務所 ( http://hino.moon.ne.jp/ )
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