第25回「ソフトウェア契約に潜むリスクとその法的対策」平成19年4月経産省発表「情報システム・モデル取引・契約書」(12) | ScanNetSecurity[国内最大級のサイバーセキュリティ専門ポータルサイト]
2018.09.20(木)

第25回「ソフトウェア契約に潜むリスクとその法的対策」平成19年4月経産省発表「情報システム・モデル取引・契約書」(12)

長らく連載が中断いたしましたが、平成19年4月経産省発表の「情報システム・モデル取引・契約書」を踏まえて、ソフトウェア開発委託契約に関する論点をご説明を再開いたします。

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長らく連載が中断いたしましたが、平成19年4月経産省発表の「情報システム・モデル取引・契約書」を踏まえて、ソフトウェア開発委託契約に関する論点をご説明を再開いたします。

情報システム信頼性向上のための取引慣行・契約に関する研究会」最終報告書
http://www.meti.go.jp/policy/it_policy/keiyaku/

これまで、主に、ソフトウェア開発委託契約における成果物の帰属について述べて来ました。この「ソフトウェア開発委託契約における成果物の帰属」は、日本弁護士連合会が主催する08年度の特別研修(08年11月27日日弁連にて開催)において、講演のテーマとなるとともに教材の一部として使用されることとなりました。日弁連の特別研修に接する機会がありましたらご高覧いただければ幸いです。

●31 契約に関する基本知識(英米法と日本民法)

大陸法を継受した我が国民法は、契約の解釈の基準を法典に明文で記述しています。この点が、判例法主義の英米法と根本的に相違するところです。(念のために補足しますと、ここでいう「大陸」とはヨーロッパ大陸を意味します。「大陸法」はローマ法にまで遡る成文の法典を紛争解決の中心とする立場です。これに対し、「英米法」は過去の先例・判例を紛争解決の中心とする立場です。)大陸法を継受する我が国においては、当事者間にて成立した契約が裁判所に持ち込まれる場合にも、その契約書の条文だけでなく、民法が規定する契約類型に沿って契約の解釈が行われ、それに基づいて裁判されることになります。

判例法主義の英米法下の弁護士には説明しても、ほとんど理解されないことですが、当事者間で成立した契約が、民法のいかなる契約類型に該当するかは、大陸法を継受した我が国においては、契約の解釈さらには裁判の結論まで左右することになります。

●32 委任か請負か

ソフトウェア開発委託契約については、委任契約か請負契約か、どちらの契約類型に該当するかとの議論がしばしば登場するのは、そのいずれに該当するかによって、民法が用意する法条が異なり、解釈の基準も異なるからです。

民法は、請負、委任(準委任)について、以下のとおり定義しています。「請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。」(民法633条)

「委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。」(民法643条)

「受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う。」(民法644条)

「この節の規定は、法律行為でない事務の委託について準用する。」(準委任・民法656条)

すなわち、「仕事を完成させること」「その結果に対価を支払うこと」という合意が請負の本質であり、「善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理すること」が委任・準委任の本質です。前者では、対価の支払いは契約の必須要件であるのに対し、後者では対価の支払いは必須の要件ではありません。

請負契約では、仕事の完成が契約の内容であり、請負人は仕事の完成義務を負い、仕事の結果に対して約定された報酬を請求することができます。請負人が仕事の完成義務を負担することから、仕事の目的物に瑕疵があるときは法定の担保責任を負担します。

これに対して、委任・準委任契約では委任事務の処理が契約の内容であり、受任者には仕事の完成義務はありません。受任者は、善良な管理者の注意(善管注意義務)をもって、委任事務を処理することで足ります。善管注意義務に違反すると債務不履行となりますが、請負における担保責任を負担することはありません。また、民事上は当事者に合意があれば報酬請求できます。商法が適用される商行為については、報酬支払いの合意がない場合であっても、商法では報酬請求が認められます(商法512条)。ソフトウェア開発委託契約においても、商法512条の適用については、その適用が争われています。

参照条文:商法
(報酬請求権)
第五百十二条  商人がその営業の範囲内において他人のために行為をしたときは、相当な報酬を請求することができる。

●33 「情報システム・モデル取引・契約書」におけるソフトウェアの開発の
手順

 「情報システム・モデル取引・契約書」は、ソフトウェアの開発の手順を以
下のとおりに分説しています。
(1) 「システム化の方向性」
(2) 「システム化計画」
(3) 「要件定義」
(4) 「システム設計」(システム外部設計)
(5) 「システム設計」(システム内部設計)
(6) 「ソフトウェア設計」
(7) 「プログラミング」
(8) 「ソフトウェアテスト」
(9) 「システム結合」
(10) 「システムテスト」
(11) 「受入・導入支援」
(12) 「運用テスト」
(13) 「運用」
(14) 「保守」

このうち、(1)から(3)を「超上流」と定義し、準委任型としています。すなわち、これらの過程では、仕事の完成を予定しておらず、委任事務の処理だけが予定されています。

(4)(5) の「システム外部」は、システムが外部(ユーザーや外部システム)に対してどのような機能、インターフェイスを提供するかを設計する「システム外部設計」と、外部設計で作成された仕様に基づきソフトウェア内部のアーキテクチャ、データ処理や管理の方法、アルゴリズムなどを設計する「システム内部設計」に分けられています。

「情報システム・モデル取引・契約書」では、(4)の「システム外部設計」は準委任型、(5)の「システム内部設計」は請負型としています。
システム設計においては、仕事の完成を予定しない準委任型と、仕事の完成を予定する請負型の双方の作業が含まれるということであり、ソフトウェア開発委託契約においてその解釈を困難にする一因になっています。

ソフトウェア開発のいわば心臓部である、(6)「ソフトウェア設計」、(7)「プログラミング」は、当然のことながら…

【執筆:弁護士・弁理士 日野修男】( nobuo.hino@nifty.com )
日野法律特許事務所 ( http://hino.moon.ne.jp/ )
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