「ソフトウェア契約に潜むリスクとその法的対策」(7)「情報システムの信頼性向上に関するガイドライン」経済産業省−「仕様変更」とは?(2)− | ScanNetSecurity
2024.04.25(木)

「ソフトウェア契約に潜むリスクとその法的対策」(7)「情報システムの信頼性向上に関するガイドライン」経済産業省−「仕様変更」とは?(2)−

20 大阪地裁平成14年8月29日判決の要旨

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20 大阪地裁平成14年8月29日判決の要旨

大阪地裁平成14年8月29日判決の「仕様変更」に関連する要旨は以下のとおりです。

(1)ソフトウェア開発を以下の5段の開発工程に分類できる。
〔1〕要件定義、
〔2〕外部設計、
〔3〕内部設計、
〔4〕ソースプログラムの作成(プログラム設計、コーディング)、
〔5〕各種試験(単体試験、組合せ試験、システム試験)
(2)〔1〕要件定義、〔2〕外部設計が完了し、成果物として基本機能設計書が提出された後は、開発委託契約に基づき完了すべき業務の内容は、基本機能設計書で確定された当初仕様を〔3〕内部設計以降の作業によって実現することである。
(3)委託者からの仕様変更の申出は、当初の契約の業務範囲を超える新たな業務委託契約の申込みであり、受託者が追加代金額の合意がないまま追加委託に係る業務を完了したことによって、代金額の定めのない新たな請負契約が成立した。
(4)仕様確定後でも、当事者間の打合せによりある程度修正が加えられるのが通常であるので、仕様の詳細化の要求は仕様変更にはあたらない。

以上のとおり、この判決は、「仕様変更」とは、「仕様の詳細化の要求」以外のものであって、当初の契約の業務範囲を超える業務の請負契約であり、追加代金額の定めがなくとも金額について合意のない新たな請負契約が成立するということです。合意がない代金額は、裁判所が相当な代金額を決するということになります。


21 「仕様変更」をめぐる契約条項例(その1)

(旧)社団法人日本電子工業振興協会発表の「ソフトウェア開発モデル契約」においては、「仕様変更」の条項は以下のとおり規定されています。

「第28条(仕様書等の変更)
1.甲または乙は、要件定義・設計サービスにおいて甲が指示する業務要件、構築サービスにおけるシステム仕様書、検査仕様書、および中間資料等(以下仕様書等という)の内容の変更の申し入れを行う場合、両者で協議のうえ定めた書面に変更の内容、理由等を明示して主任担当者の記名押印を行ったうえで、これを相手方に通知することをもってのみ行い得るものとします。
2.前項に基づく相手方からの仕様書等の変更の申し入れがあった場合、甲および乙は、当該申し入れがあった日から○日以内に変更の内容およびその可否につき協議を行うものとします。なお当該協議期間内に協議が調わない場合、乙は当該申し入れ前の契約条件にしたがって、作業を実施することができるも
のとします。
3.前項に基づく協議の結果、変更の内容が、本契約および個別契約に定める金額、納期およびその他の契約条件に影響を及ぼすものであると両当事者が判断した場合には…

【執筆:弁護士・弁理士 日野修男】( nobuo.hino@nifty.com )
日野法律特許事務所 ( http://hino.moon.ne.jp/ )

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《ScanNetSecurity》

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