<目 次>───────────────────────−今回:プロジェクト・リスクを管理するシステム開発 プロジェクトのリスク管理(1)− 1. はじめに 2. 増大するプロジェクト・リスクとその要因 3. システム開発プロジェクトにおけるリスク管理−次回:プロジェクト・リスクを管理するシステム開発 プロジェクトのリスク管理(2)− 4. システム開発プロジェクトにおけるリスク管理のポイント 5. おわりに──────────────────────────── システム開発はなぜ計画通りに進まないのか。当初の予算と工期で、かつ必要な品質を保持してシステム開発を完了させるための方法は無いのか。本稿では、システム開発プロジェクトをリスク管理の側面からとらえ、そのポイントを検討する。1. はじめに あらゆる企業や組織体においてそのビジネスや目標を達成するために、効率的で効果的なシステム開発が必須条件となっている。一方でシステム開発プロジェクトにおいては、開発するシステムの大規模化、複雑化に比例して、開発および導入作業の困難は増大し、またリスクの増大も著しい。さらに、多くの企業にはシステム開発プロジェクトにおけるリスクを識別、管理するために必要な経験者が極めて少ないのも事実である。 その結果、本番稼動の延期や断念、稼動中システムの中断や誤処理、または情報漏えいなど、コンピュータシステムに関連する事故などが後を絶たない。特に金融機関では、合併等によるシステム統合、新サービスの提供など、大規模なシステム開発が経常的に発生していることから、これらのシステム開発プロジェクトが予定した期間と品質で完了しない場合、顧客からの信頼をも失うことになりかねない。2. 増大するプロジェクト・リスクとその要因 1990年代に入って、アメリカを中心としてオープン・システムへの移行が一つのブームとなった。日本でもバブルの崩壊とその後の景気低迷により、コスト削減が至上命題になり、オープン・システムの普及に拍車をかけた。ダウンサイジングやオープン技術の採用によるコスト削減がオープン・システムの大きな売りであったからだ。そのような流れの中でシステム開発環境も大きな変化を遂げてきた。それまでは企業の基幹系システムはメインフレームシステムが主流であり、1つのコンピュータ・メーカーがホスト・コンピュータから端末に至るハードウェア、OSからアプリケーションに至るソフトウェアを一貫して提供していた。それがオープン・システムの普及に伴い、サーバやPC、OSやアプリケーションなどをそれぞれ別々のベンダが提供するようになった。その結果、システムの各コンポーネントがブラック・ボックス化した。 オープン・システムの普及は、企業のシステム開発・導入方法も変化させてきた。先にも述べたコスト削減という至上命題により、企業の情報システム部門は限られた予算の中でのシステム開発を余儀なくされる。そこに新しいオープン技術が登場したことにより、コスト的にも技術的にも社内でのシステム開発が困難になり、外部委託開発が一般的になった。その結果、企業内部にシステム開発やプロジェクト管理のノウハウが蓄積されにくくなった。一方、システム開発を請け負ったSI企業も、コスト削減や新技術への対応に迫られ、システム開発作業をさらに外部委託するようになった。 このようなシステム開発環境の変化により、システム開発全体を把握し、管理することが困難になった。そのため、システム障害や事故の発生を未然に防止したり、システム障害や事故が発生した際に原因を特定したりするのが極めて難しくなったのである。監査法人トーマツhttp://www.tohmatsu.co.jp/ この記事には続きがあります。 全文はScan Security Management本誌をご覧ください。 http://shop.ns-research.jp/security/detail.php?form_id=54&page_id=401