シリーズ連載「海外における個人情報流出事件とその対応」 ■第16回■●ペンタゴンのセキュリティ TriWestの個人情報盗難事件は、軍に関係のあるものであったことから、関係者に大きなショックを与えた。テロリストによるものだとは考えられないとは発表されているが、国防省に関係するデータが漏洩するということで、同省からの仕事を受注する企業でのセキュリティについても、見直しを迫られた。 事故前4年にわたり、米国下院政府改革委員会では政府機関のコンピュータセキュリティに関して、格付けを行っている。事件の少し前に行われた発表では防衛省のコンピュータセキュリティは、100点中38点、「F」すなわち不合格という評価を受けている。F評価の理由としては、管理調整が不十分であることが挙げられている。「最近の国土安全保障法案で、連邦情報安全管理法の監視強化が検討中であった」と委員会の会長トム・デービス議員は語った。 軍関係者の医療記録の大規模コンピュータ化が完了すると、今回の盗難事件のように物理的な盗難ではなく、コンピュータネットワークを狙うハッカーなどの危険が増す。プライバシーの専門家は、国防省がさらに個人情報のデジタル化を進めるにつれ、スタッフの間違いなどから起こるセキュリティ事故や、外部からの侵入にさらに対策を強化しなければならないと警告する。 2003年11月、上院委員会のテロリズムに関する小委員会で、データベースのセキュリティに関するヒアリングが行われた。特に同時テロ多発事件後は、政府と民間セクターの間で、大規模な個人情報のデータベースを作るという動きがあり、この動きに関してのものだ。ヒアリングで証言を行ったPrivacy Timesの発行者であるエバンズ・ヘンドリックは、1. 個人情報盗難事件は米国で最も急速に増加している犯罪であること2. 一方、ハッカーが常にセキュリティ状態をテストしていること。多くは単にデータベースに侵入することをゲームのように考えて行っているとしても、全体の何割かはわからないが、犯罪を目的にしたハッカーも存在すること3. 多くの組織でデータセキュリティに関する認識が十分ではないこと4. データベース管理を外注に出す傾向、それも人件費削減のためにフィリピン、インド、パキスタン、ジャマイカなどで行う傾向があることと、データベース管理について警告を発している。●TriWestの対応 TriWestでは事故後、直ちに被害者に通知を行っている。事件は通知を義務付けたカリフォルニア法施行前に起こっていること、施行以前はとかく情報漏洩事件を起こした企業は事故を隠す傾向にもあったことから、その姿勢は高く評価されている。2003年にFBIが行った個人情報盗難事件に関する調査では、回答のあった企業、政府機関のうち、34%のみが警察に通報しているという結果が出ている。 TriWestが通知を行ったのは、無料で信用報告の取り寄せができること。および信用調査機関に対して盗難による警告を伝えることを勧めたが、通知したうち18万3000人は事故当時、アフガニスタンとイラクの前線についていたこともあり、事件発覚の約10日後、要望さえ伝えれば、同社でこの処理を行うと発表した。【執筆:バンクーバー新報 西川桂子】 この記事には続きがあります。 全文はScan Security Management本誌をご覧ください。 http://www.ns-research.jp/cgi-bin/ct/p.cgi?ssm01_ssmd