サイバーテロでインフラが攻撃されたら? 〜ワーム原因説もあった北米大停電(1) | ScanNetSecurity
2024.04.24(水)

サイバーテロでインフラが攻撃されたら? 〜ワーム原因説もあった北米大停電(1)

 2003年8月14日、午後3時ごろから、米国北東部からカナダ東部にかけて、米加9州、24,000平方キロメートルという広範囲で発生、5000万人が影響を受けた大停電。当初、原因は、ナイアガラの米国側で、落雷により発電所に被害が出たためと言われたり、サイバーテロの可能性

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 2003年8月14日、午後3時ごろから、米国北東部からカナダ東部にかけて、米加9州、24,000平方キロメートルという広範囲で発生、5000万人が影響を受けた大停電。当初、原因は、ナイアガラの米国側で、落雷により発電所に被害が出たためと言われたり、サイバーテロの可能性も示唆されたりしたが、最終的には、コンピュータによる監視制御システム(SCADA)の不具合が問題であったということで結論づけられた。

 同事故では、電力、ガス、水処理など公共事業で広く使用されているSCADAシステムが、サイバーテロ、あるいは単なるハッカーなどにより、いかに大きな被害を受ける可能性があるか、そして、そのようなことがないようセキュリティを強化する必要性が確認された。

 このレポートでは、大停電事故とSCADAシステムの関連、SCADAのセキュリティの問題等、詳しく見てみたい。


●大混乱を起こした停電

 停電は米国東部時間2003年8月14日午後4時すぎ、ニューヨークやトロントなど北米東部一帯で発生。1000ヵ所を超える発電所が停止したほか、鉄道や地下鉄などの交通機関が運転を停止。自動車工場が集まるデトロイト周辺では、大手メーカーの工場約50ヵ所で操業をストップ。影響を受けた地域は全米GDPの24%を占めることから、経済に与えた被害も大きい。ニューヨーク市では、この混乱に乗じた事件を防ぐために、1万人の警官が14日、夜を徹して警戒にあたった。交通機関の混乱により帰宅できない人々で町はあふれかえり、家庭でも電源が必要な電話機は不通となり、冷蔵庫が使用できなくなるなど、大混乱が起きた。

 ニューヨークでは、ドル箱でもあるエンパイヤステートビルのエレベーターが16日になっても復旧せず。一日に2万人が訪れ、それぞれが11ドルのチケットを支払うそうだから、これだけで20万ドルの損失だ。他、ブロードウェイでも公演が中止になったための、チケットの払い戻しなど、ニューヨーク市だけでも停電が与えた経済への影響は、8億ドルから10億ドルと言われている。

 復旧はカナダのトロント周辺が最初で、午後9時ごろまでには電力供給が再開している。ニューヨークでは遅れ、約29時間後の15日午後9時すぎ、最も長引いたデトロイトは17日までかかった。

 事故後、米加合同調査委員会で原因究明が進められた。2004年4月5日に発表された米加タスクフォースによる、最終報告では、原因は単独ではなく、様々な要因が重なった結果、これほどの大きな事故となったとしている。しかし、責任の大部分はオハイオ州に本拠をおくFirst Energy Corpにあるとしている。

すなわち、

・First Energyが、高圧電線の周囲で手入れせずに放置していた樹木が、電線 に被害を与えた。
・事故を通知すべき、コンピュータ制御のEnergy Management System(EMS) のアラームが作動しなかった。
・コントロールルームでは、システムを信用しきっていて、他にも電話で事故 の報告があったのを無視していた。
・これらの要因により、最初に起こったオハイオ州北部での停電を封じこめる ことができず、連鎖反応を起こし広範囲に広がった。

ということだ。

 但し、アラームシステムが作動しなかった原因についてが謎であった。これについては事故当初から、電力施設で使用されている制御システムSCADAが、ワームにより感染したためという噂が流れていた。事故の3日前から猛威を振るったブラスターというワームがシステムに感染したのが原因だったのではないかというのだ。


【執筆:バンクーバー新報 西川桂子】

(この記事には続きがあります。続きはScan本誌をご覧ください)
http://www.ns-research.jp/cgi-bin/ct/p.cgi?m-sc_netsec

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