―― 無線によるネット利用は今や生活に欠かせなくなりましたね。そうなんです。日常生活に本当に定着した感じがします。かつてはノートPCでモバイル・ワークする人達の利用を想定していましたが、現在はスマホやタブレット端末などを肌身離さず持ち歩く人たちの利用が中心です。Wi-Fiアクセスの設置も社内用ネットワークとしてだけではなく、一般家庭用としても広く普及しています。また今後の東京オリンピックや観光立国推進に向けて、各地で公衆Wi-Fiスポットの整備が進んできています。私も驚いたのですが、スマホの普及もあってか、近年の新入社員の中にはWi-Fiが当たり前で、有線LANを知らない新入社員が情報通信系の会社に入社してくるんですね(笑)。また、お笑い芸人のネタにもWi-Fiが登場するくらい一般の人の認知度も高くなりました。日常的なコミュニケーションや情報収集だけでなく、交通機関の事故、災害の情報や、緊急時の連絡までスマホを用いて確認、連絡を無意識に行うようになりましたし。おっしゃる通りの生活必需品であり、もはやネットの無線、Wi-Fi利用は水道と同じレベルで語られつつあるかと思います。―― 今回、Wi-Fiのセッションを企画したきっかけを教えてください。一般層でのWi-Fiの認知度が高まる一方で、利用者の急増によって、周波数帯の混雑による接続トラブルが起きています。また、Wi-Fi設置の敷居が低くなったために、電波の特性などを意識しない設置、あるいは安易な設定などでセキュリティ的に甘い状態のまま意識せずに運用しているなどのケースがよく見られます。もちろん一般利用者が技術を意識せずに使えるというのは素晴らしいことなのですが、Wi-Fiアクセスを提供する側は、利用者が快適・安全に利用できるよう、利用者の分まで技術知識をカバーしていく必要があります。しかし今は、この爆発的な普及状況と比較すると、バランスでは技術知識よりも普及が先行しているなという認識です。そのため、この機会に受講者の皆様のWi-Fi技術の知識を補強する力になりたいと、このセッションを企画しました。―― 具体的にどんなセッションになりそうですか?最初にWi-Fiの基礎知識と電波の知識について説明した後に、応用ノウハウと最新技術トピックを共有します。そして最後にWi-Fiを取り巻く課題について、エンジニアとしてどう対応していくかの考察を加えていく予定です。「Wi-Fiのセミナー」というと、各メーカーの自社製品についてのみ取り扱うセミナーが多いのですが、Internet Weekならではという点では、Wi-Fi技術にフォーカスし、メーカーの製品仕様に依存しない技術の話ができることがあるかと思います。また今回、プログラムに社会的な話題や課題についても盛り込んだことで、純粋に技術知識だけではなく、今現在、Wi-Fiアクセスの提供にはこんな社会的課題が潜在しているという認識を、Wi-Fiに携わるエンジニアの皆さんに持っていただけるんじゃないかと考えています。これも純粋な技術セミナーではあまり見受けられないプログラム構成ではないでしょうか。―― 社会的な切り口や、商用セミナーと違ったアプローチは、Internet Weekならではですね。
[Internet Week 2016] 厳選セキュリティセッション 第6回 「ファイルの受け渡し方法を考える ~暗号化ZIPは何のため?」 JPNIC 木村 泰司氏2016.11.8 Tue 13:45