CODE BLUE 2015 セッションレポート 第2回 「さまざまな事例から見る、諜報機関のフィクションによる印象操作(リチャード・シーム氏)」 | ScanNetSecurity[国内最大級のサイバーセキュリティ専門ポータルサイト]
2018.04.22(日)

CODE BLUE 2015 セッションレポート 第2回 「さまざまな事例から見る、諜報機関のフィクションによる印象操作(リチャード・シーム氏)」

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日本発の国際セキュリティ会議 CODE BLUE 2016 はすでに事前参加登録を開始、2016 年 10 月 20 日、21 日の開催が近づいている。

CODE BLUE 2016
http://codeblue.jp/2016/registration/
※8月31日迄、通常登録受付中

本稿では、昨年開催された CODE BLUE 2015 をふりかえり、特に興味深かった講演をレポートしたい。CODE BLUE 2015 では、ふたつの基調講演が行われ、1 日目の最初と 2 日目の最後という、基調講演に始まって基調講演に終わる形になった。

幕開けは神戸大学名誉教授の松田卓也氏の「シンギュラリティがやってくる」、そして最後の基調講演を飾ったのがリチャード・シーム氏による「真実を語る唯一の方法はフィクションの中にある:国家安全保障国家これまでの動き」であった。

小説「Mind Games」の著者、アメリカ政府の UFO 対応の歴史的分析「UFOs and Government : A Historical Inquiry」の共著者であるシーム氏は、これらの著作に言及しつつ、現代の「真実」がいかにフィクションで作られているかを語った。


●真実はフィクションを通じてのみ語れる!?

シーム氏は、直前に行われたトラヴィス・ケアロック氏の講演や前日の松田氏の基調講演に触れつつ、「真実」について話し始めた。真実のソースは何なのか、どうすればそれが真実であるとわかるのか。情報はメディアというフィルターを通して社会の意識に伝えられているが、データは簡単に改変できる。

松田氏は「ターミネーター」などが作り出したイメージについて語ったが、映画はこのようにわれわれの考え方の枠組みを作り、テクノロジーに対する印象を決定づける。アイディアを伝えるにはエンターテインメントがいちばんだという。真実だと言ったら馬鹿げてると思われる話でも、フィクションとして伝えられると簡単に受け入れられてしまう。

9.11 同時多発テロでアメリカは変わった。諜報機関は今までと違うやり方、非合法だったり違憲だったりする活動を許可・命令された。シーム氏はこれに懸念を持つ職員と倫理についてディスカッションしたが、その後「リチャード、このような議論は機密情報ではないがセンシティブであり、他人に話してはいけない。これから真実が語れるのはフィクションを通してのみだ」と言われたという。

そこでシーム氏は、諜報活動、ハッカー、深層心理、地球外文明など、多くの人が経験していない出来事、見えていない現実についてのフィクションを執筆。諜報のプロから、この話の95%は真実だと言われたが、どの95%が真実なのかを知らなければ意味はない。

●フィクションと真実が交錯する世界

1950 年代~ 60 年代、実は CIA はアメリカ最大の文学・芸術のスポンサーだった。ジョージ・オーウェルの有名な「動物農場」がアニメ映画化された際にも、CIA が出資している。CIA は 1,000 以上の書籍を出版し、またジャーナリストをサポートした。

こうした密かな活動に対抗するのは難しい。例えば 1950 年代にアメリカ国民は「洗脳」に対して強い恐怖を抱いた。これはエドワード・ハンターというジャーナリストが、共産中国で行われているという洗脳を紹介したことによる。これにより洗脳という言葉、概念が生まれたのだ。ハンターは実は CIA の協力者であり、その描いた洗脳テクニックはフィクションだが、あたかも真実のように伝えた。

そして洗脳を扱った小説「Manchurian Candidate」は、フランク・シナトラ主演で映画化された(邦題「影なき狙撃者」)。もちろんフィクションだが、見た人は洗脳という概念を深く信じるようになった。そして後の対テロ戦争の時代、CIA が作成した「 KUBARK 対諜報尋問マニュアル」では、「Manchurian Candidate」で描かれたフィクションのテクニックがそのまま導入されている。

1970 年代の、沈没したソ連潜水艦を引き揚げソ連の技術を入手しようという計画「プロジェクト・アゾリアン」では、複数のレベルで偽装が行われた。携わった人間は、それぞれのレベルでは事実である説明を受けた。本当の目的を知っていたのは 7 人だけで、アメリカ大統領すら全体を知らなかったという。しかしこういうやり方により混乱も起きる。

レーガン政権時代の国務長官アレクサンダー・ヘイズは、ある本で「主なテロ組織はソ連によってコントロールされている」という話を読み、CIA 長官のウィリアム・ケイシーに調査を指示した。ところが調べたところ、実はこの話の元になっていたのは CIA がイタリアの新聞に書かせた記事であり、フィクションだったのだ。架空のストーリーが自分自身に戻ってきて害を与えたということになる。

●米国政府が UFO 対策で行った印象操作

シーム氏が共著者である「UFOs and Government : A Historical Inquiry」は、アメリカ政府が 1940 ~ 80 年代に「 UFO 」と呼ばれる現象にどう対応してきたかを、開示された公文書などに基づき歴史的分析を行ったものだ。これで明らかになったのは、政府は 1953 年には UFO 現象自体は事実だと理解していたということ。だがその科学的根拠には興味がなく、それが実際にアメリカに脅威を及ぼしているか、すなわち国家安全保障の観点でのみ考えていた。そして実際の脅威は「 UFOを信じること」だとして、目撃情報などを隠す一方、あえてタブロイド紙に記事を載せるなどして、UFO を信じるのは馬鹿げている、という印象を作ったという。

シーム氏は最後に、私の言ったことをよく考えてほしい、と述べた。その後の質疑応答でも、聴衆からの質問に熱心に答えていた。


神戸大学名誉教授の松田卓也氏の「シンギュラリティがやってくる」、そしてリチャード・シーム氏による「真実を語る唯一の方法はフィクションの中にある:国家安全保障国家これまでの動き」、どちらの基調講演も、一見あまりセキュリティとは関係なさそうに思えるが、実はセキュリティにつながる部分も多い。さまざまな側面で考えさせられる内容だったと言えるだろう。
《西方望》

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