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2018.07.19(木)

CODE BLUE 2015 セッションレポート 第1回 「21世紀の途上国にならないために ~ シンギュラリティがやってくる (神戸大学名誉教授 松田 卓也 氏) 」

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日本発の国際セキュリティ会議 CODE BLUE 2016 はすでに事前参加登録を開始、2016 年 10 月 20 日、21 日の開催が近づいている。

CODE BLUE 2016
http://codeblue.jp/2016/registration/
※8月31日迄、通常登録受付中

本稿では、昨年開催された CODE BLUE 2015 をふりかえり、特に興味深かった講演をレポートしたい。CODE BLUE 2015 では、ふたつの基調講演が行われ、1 日目の最初と 2 日目の最後という、基調講演に始まって基調講演に終わる形になった。

幕開けは神戸大学名誉教授の松田卓也氏による「シンギュラリティがやってくる」。シンギュラリティという言葉は最近よく耳にする。「シンギュラリティを語る会」を主催する松田氏によるこの講演は、シンギュラリティについてわかりやすく解説してくれた… と言えばそうなのだが、実は話の主眼は意外なところにあった。


●超知能を制するものが世界を制する!

松田氏は、シンギュラリティ(技術的特異点)とは「超知能ができるとき」だと説明する。未来学者レイ・カーツワイルによればこれは 2045 年に訪れる。人間よりはるかに知能の高い人工知能が誕生するとどうなるのか。確かなのは科学技術が爆発的に進歩し、人間社会に大きな変化を及ぼすということだ。

続いてハリウッド映画などのフィクションを引き合いに出して現在の人工知能観を解説。「2001年宇宙の旅」の HAL9000、「ターミネーター」のスカイネットといった人間に対して反乱を起こす人工知能、「マトリックス」のように人間を完全にコントロール下に置いている人工知能や、人間の肉体や知覚を改造して拡張する「攻殻機動隊」など多数を例に挙げた。

現在の人工知能は、Siri であれ IBM の Watson であれ「狭い人工知能」であり何かに特化したものだ。カーツワイルは、人間 1 人と同等の「汎用人工知能」が 2029 年に誕生すると予想している。このポイントを松田氏はプレ・シンギュラリティ、前特異点と呼ぶ。

そして世界人類 70 億人と同等の超知能が誕生、シンギュラリティが起きるとどうなるのか。「あらゆる問題が解決される」という楽観的な見方と、人類が滅ぼされるか奴隷にされるようないわばハリウッド的世界観がある。現実的には楽観と悲観の間で、超知能は人間と共存するだろうが、それなら良いというわけではない。超知能を持つ国と持たざる国の格差が生じて新たな先進国と発展途上国に世界が分裂、超知能を制するものは世界を制す、となるかもしれない。

●幕末と現代の意外な共通点とは? 「21世紀の途上国」にならないために

かつて、うまく産業革命に乗れた国が先進国になり、乗り遅れた国は途上国に転落した。日本がぎりぎり乗り遅れなかったのは、幕末に支配層の危機感が薄かったにもかかわらず下級武士、志士が目覚めたことによる。現状は幕末に似ている。泰平の眠りの中、超知能という黒船に備えるには「現代の志士」が必要だ。蘭学や剣術ではなく数学、コンピューター、英語に熟達した「プチ天才」たちに超知能を作ってほしい、そしてそれは作れる、と松田氏は語る。

人工知能研究は、アメリカでは軍事と企業の金儲けの 2 つの動機で促進されている。特にグーグル、マイクロソフトといった IT ジャイアントは人工知能研究に力を入れており、グーグルはカーツワイルを雇ったことをはじめ、「知能」を買っている。日本のベンチャー企業 SCHAFT も、日本では支援を受けられずアメリカ国防省 DARPA に支援され、成功した後グーグルに買われた。日本は何をしているかと言いたい、と松田氏は語気を強めた。

●日本からシンギュラリティを起こす!

人工知能研究に対する予算の規模は、松田氏の見るところアメリカ IT 企業と欧米政府と日本の比率はおよそ 100 : 10 : 1 。このままでは敗北は必至だが、日本からシンギュラリティを起こすことはできる、と松田氏は言う。

ここで松田氏は、PEZY Computing 創業者の斉藤元章氏について語る。斉藤氏は元々医師で医療機器ベンチャーを立ち上げるが、やはり日本で支援を受けられずアメリカで起業。成功を収めるが日本に戻りスーパーコンピューターの開発を始める。チップが完成してからわずか 7 ヵ月でスパコンを作り上げ、それが 2014 年には省エネスパコンのランキングである Green500 で 2 位、2015 年には 1 ~ 3 位を独占するという快挙を成し遂げた。

現在の PEZY チップは 1,024 コアだが、斉藤氏は 2020 ~ 2025 年には 1,000 億コア・ 100 兆インターコネクトという、人間の脳に匹敵するチップを作り、これによりわずか 6 リットルの体積で 73 億人に匹敵するマシンを作るというのだ。誰しもホラ話と思うだろうが、7 ヵ月で世界トップクラスのスパコンを開発したという実績がある。

超知能のハードはこれで 10 年後に誕生するかもしれないが、問題はソフトだ。現在のところ、どのような理論が使われることになるかは全くわからないという。

最後に松田氏は、日本はこのまま放っておけば滅びる、衰退すると改めて警鐘を鳴らして講演を締めくくった。
《西方 望》

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