知名度の低いScanNetSecurityの基幹サービス「有料メルマガScan」のPRのために、日本で最も情報セキュリティを知る漫画家 瀬尾浩史先生に、漫画化の依頼を相談し快諾いただきました。第一回打ち合わせは、なぜか土曜日の午後7時から、中野坂上のファミレスで行われました。まず、キャラクターを提供する作家の一田和樹さんに寄稿いただいたマンガのシナリオを瀬尾先生にお見せしました。少し長いですが、一田さん原作全文を掲載します。『新春怪奇セキュリティ劇場 メールマガジンの美女』●ScanNetSecurity編集部の応接室工藤伸治が落ち着かない様子で座っている。ジーンズにジャケットというラフな格好。そこにScanNetSecurity編集部の女性社員がショートケーキと珈琲を持ってくる。女「お待たせしております。編集長の上野はまもなく参ります」工藤「ケーキ? ここは客にケーキ出してくれるんだ。へー、猫いらず入ってないよね?」女「ウホホホホホ、そんなことはございません。フレンチパウンドハウスのショートケーキでございます」工藤、ひとくちで食べてしまう。工藤「うまいね」女、目を丸くして出て行く。入れ替わりに上野登場。蝶ネクタイにスーツ姿。BLの責めのような容姿。上野「お待たせしました宮藤さん…あっ? お前、誰だ?」工藤「誰かわかっててケーキ出したんじゃないのか?」上野「ケーキ? あっ、食べちゃったのか、お前。泥棒!」工藤「噂通り、はやとちりの多い野郎だ。大先生に『また上野宣か』って言われるだけあるな。筑波に行くと『また上野宣か』ってプリントされたTシャツ売ってるそうじゃないか」上野「な、なにをでたらめを!筑波で売っているのは『似非セキュリティコンサルタント』のTシャツだ。そもそもお前は誰だ?」工藤「工藤伸治だよ」上野「なにい。お前こそクズじゃないか。業界で有名な中二病コンサル野郎。N電気出入り禁止のうんこ」工藤「おまえなあ。言っていいことと悪いことがあるって、教えてやろうか!」ふたりにらみあう。さきほどの女性社員が、Scan有料読者である美女宮藤を連れてくる。女「編集長、お客さまです」上野「あっ、宮藤さん」宮藤「あら?どこかでお会いしましたっけ?」上野、真っ赤になる。上野「い、いえ、アポをいただいていたので、そう思っただけです。はじめまして。編集長の上野です」宮藤「はじめまして、宮藤です」工藤「『また上野宣か』の上野って言った方がわかるぜ」上野、かみつきそうな目で工藤をにらむ。宮藤「あっ!あの有名な……」宮藤言いかけて、とっさに口を手で押さえる。上野「おかけください」宮藤「失礼します。あの、それで本日うかがったのは…」上野「元上司の方がScan有料版を購読していると思うから読者リストを見たいということでしたね。おわかりと思いますが、残念ながら個人情報保護の観点からお見せすることはできかねます」宮藤「そこをなんとか。教えていただかなくてもいいんです。広告出稿をすることも考えています。『葉山塔さん、連絡乞う』みたいな」上野「尋ね人広告ですか! やったことはありませんが、まあ不可能ではないです。しかし、なぜ?」宮藤「だって、Scan有料版は部数は多くありませんが、精読率が高くサイバーセキュリティに特化したキイパーソンに確実にリーチできるほぼ唯一の媒体ですから」工藤「ツイッターやフェイスブックで充分なんじゃないの?」横でぼそっという。上野、にらむ。宮藤「あら、ツイッターなんか全然ダメです。あれは告知を流すタイミングが難しいし、すぐに流れていってしまうでしょう。それに比べてメールマガジンは、しばらく経ってから読み直してくれる人もいるんです。フェイスブックは利用者がまだ少ない上、うっとうしいから放置してる人も多い。なにしろScanは『知らなかったではすまない』情報が載ったメールマガジンですから、必ず読む人が多いんです」上野「よくわかってらっしゃる。その元上司の方はサイバーセキュリティ関係の方なんですね。それなら当媒体は最適です」宮藤「私、どうしても葉山さんに会わなければならないんです」宮藤、遠い目をしてつぶやく。上野、その横顔を見つめる。上野「承知しました。不肖上野宣、お力になりましょう。**でも**でも**でもいつでも電話1本で確認できます」宮藤「本当ですか?」確認するように、工藤の顔を見る。工藤「ほんとだよ。こいつ人脈だけはすごいんだよな。それはまあ認めてやる」上野「『尋ね人』広告も格安で承ります。その上司の方は購読なさってます」Scanの購読と広告の料金体系を図示。工藤「おいおい。さっき個人情報保護って言ってたろ。教えちゃヤバイだろ」上野「いや、これは第三者による情報漏洩ではない。本人による告白なのだ」上野、哄笑する。あっけにとられる工藤と宮藤。ふたりの前で上野は顔の皮膚をはぐ(天知茂の明智小五郎参照)。宮藤「あっ!あなたは、葉山さん」葉山「そう、僕が葉山塔だ。僕はひそかに君のPCにスパイウエアを仕掛け、君が今日ここに来ることを知り、こうして待っていたのだ」宮藤、工藤同時に「なぜ?」葉山「君に告白するためだ。君を愛している。メールを盗聴してわかった。君も僕を愛していたのだとね。さあ、僕の胸に飛び込んでおいで」宮藤、工藤同時に「バカじゃねえの」葉山「バカとかなんだ!」工藤が笑い出し、そして顔をはぐ。葉山、宮藤同時に叫ぶ「ああっ」上野「そう。私が本物の上野宣だ。私になりすましたヤツが現れたと聞いて、こちらも変装して様子をうかがっていたのさ」葉山「お前、自分の悪口をよくあんなに言えたな」上野「Scanは自虐ネタは得意だからな」宮藤「あのー、こう言ってはなんですが、私すっかり冷めてしまいました。明智小五郎は北大路欣也が最高です。なにしろおとうさんですよ。天知茂かぶれの男性とはおつきあいできません」上野と葉山「え?」了ミステリー作家らしい江戸川乱歩リスペクトのオチがついた作品なのですが、瀬尾先生曰く「長すぎます。これだと50ページくらい必要になります」こうして、今回のScan漫画化計画の予算の都合上、50ページを3ページに縮めることが余儀なくされたのでした(完成版入稿後に、再度完全改稿に応じていただいた一田和樹先生に感謝いたします)。