工藤伸治のセキュリティ事件簿 第10回 | ScanNetSecurity
2024.03.29(金)

工藤伸治のセキュリティ事件簿 第10回

※本稿はフィクションです。実在の団体・事件とは関係がありません※

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※本稿はフィクションです。実在の団体・事件とは関係がありません※

「なになさってるんですか? えと、工藤さんでしたっけ?」

オレがコーヒーをすすると、私まだがんばれます女は、モニターをのぞき込みながら、尋ねてきた。気をつけなきゃいけない。こいつだって容疑者だ。

「葛城さんに頼まれてね。パソコンのチェック。ハードディスクがおかしいんだよね。こっちのノートパソコンにバックアップしながら、ハードディスクをチェックしてるの」

オレは口からでまかせを言った。

「確か、北海道から研修にいらしてるんですよね? なんで葛城さんの手伝いをしてるんですか? 会議に行かなくてよかったんですか?」

いろいろうるさく訊いてくる女だ。お前が犯人じゃねえの。ここで、犯人はお前だ、と怒鳴って指さしたらどんな顔するだろう? と思ったが、一般社員には事件のことは伏せてあるので止めておいた。

「なんか、いいように使われちゃってさ。なんでだろうね」

オレは、適当にお茶を濁した。

「和田さんだっけ?」

オレは適当に女の名前を言ってみた。女は、くすっと笑うと、和田ちゃんはあの子です、とメガネ女を指さした。ちゃんづけで呼び合う職場ってやだな(註)。メガネ女は、ぎこちない笑顔を浮かべた。こんなにできの悪い愛想笑いは初めて見た。

「私は遠山です」

「ああ、遠山さんね。悪い、間違えちゃった」

その後も、遠山はオレの周りをうろうろしていたが、オレが適当にはぐらかしているとあきらめて自分の席に戻っていった。オレの様子を見に来るなんて、あいつは怪しいな、とオレは思った。

そろそろ作業が終わろうとする頃、なにやら気配を感じてオレは振り返った。和田が立っていた。目があった。

【註解】ちゃんづけで呼び合う職場
マスコミ関係などいわゆる業界だけでなく、一部のIT関連業界でも「ちゃん」づけしているようだ。また、会社全体でなく、女性同士の間だけ、「ちゃん」づけが蔓延していることもある。昔のバブルの時期には、それなりにアリだったかもしれないが、低迷と混沌の日本にあってそのような呼称を使うのは非常識を通り越して、精神に大きな傷を持った人ではないかと疑われかねないので注意が必要である。


【執筆:才式】
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