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2017.11.24(金)

来るべき世界 − 情報セキュリティ未来予想図 ライアットウェアへのお誘い(3)サイバー犯罪は行政処分、反則金になる

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本連載は、短編SF小説の形態で、近未来の情報セキュリティ動向のこれからを探ります。本稿はフィクションであり、実在する人物・組織・団体等の事物とは一切関係がありません。

物語の舞台は2015年、日本のGDPは中国とインドに抜かれて、海外メディアもほとんど日本から撤退、いまや日本人だけが日本に関心を持っています。201X年に中国で発生した原子力発電所事故は、放射能に汚染された黄砂を日本にもたらし、テレビの天気予報では、放射能黄砂予報が放送されています。

増加の一途をたどるコンピュータ犯罪に司法機関は麻痺状態となり、ついに201X年、コンピュータ犯罪に関する反則通告制度適用が国会で承認されました。これにより、一部の地方自治体で、交通違反同様、民間にサイバー犯罪者の取り締まり及び逮捕が委託されたことで、高い失業率を背景に、コンピュータ犯罪の賞金稼ぎが日本国内に多数誕生しました。

フィッシング詐欺、ネット詐欺、著作権法違反、児童ポルノはもちろん、Webサービスやソフトウェアの脆弱性の発見や通報も反則通告制度適用対象となり、基幹OSの脆弱性などは、一度発見すれば大きな儲けになります。主人公は、近未来のサイバー犯罪の賞金稼ぎ。主にWebサービスの脆弱性を見つけて生活しています。

本編は、2015年に生きる主人公が、10年前に自分に届いたクラウド型犯罪ネットワークサービス「R.W.(ライアットウェア)」への勧誘メールと、当時の自分の手記を読み返す形式で展開します。


ライアットウェア参加者が捕まらない根拠は、その数の莫大さにある。多すぎる犯罪者は、全員を捕まえることができない。

現在、ネット上で罪を犯した人間は多数逮捕されているが、ネット詐欺、著作権法違反や児童ポルノ、威力業務妨害などなど無数に存在しそうな犯罪者を全員捕まえることはきわめて困難であろう。

R.W.のメールにあったように「我が国の警察官の総数は30万人、収監されている受刑者は約8万人です。さらに、大量の警察官が毎年、定年退職が続いております。すでに司法制度は、パンク状態となっています」という状況なのである。

平成21年上半期のサイバー犯罪の検挙状況等について(警察庁)
http://www.npa.go.jp/cyber/statics/h21/pdf50.pdf

しかもネット犯罪者は増え続け、若年層もどんどん活発になってきている。

「フィッシング詐欺」事件に関しまして
14歳少年によるとフィッシング詐欺事件について(NHN Japan株式会社)
http://www.nhncorp.jp/press/files/PRESS_20060530190035.pdf

以前にも同様の状況があった。増え続ける犯罪に司法が対応しきれなくなったことがある。道路交通法違反である。いまでは考えられないことであるが、スピード違反などもいちいち裁判手続きを経ていたのである(交通事件即決裁判手続法に基づく簡便なものではあったが)。1968年に交通反則通告制度というものが設けられ、大きな違反でなければ現在のようにお金を払ってそれで終わりということになった。前科もつかない。

交通反則通告制度(Wikipedia)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%A4%E9%80%9A%E5%8F%8D%E5%89%87%E9%80%9A%E5%91%8A%E5%88%B6%E5%BA%A6

ネット上の犯罪に関しても、これと同じことになるのではないかとライアットウェアの主宰者たちは考えているようである。もちろん、日本だけのことではない。世界的にそうなるということである。

まず最初にネット詐欺、著作権法違反、児童ポルノ、威力業務妨害などが、スピード違反のようにお手軽に取り締まられるようになり、その次に、さらに重篤な犯罪もネット上のものに限っては、スピード違反なみに簡単に取り締まられることになるというのである。当然、金額の多寡などで刑事訴訟の対象になるものもあるだろうが大半のものは行政処分、つまり反則金を払って終わりとなる。もちろん、逮捕も拘置も収監もない。そもそも拘置、収監できないことから、こういうことになっているのだから当たり前だ。

そうなると明らかに犯罪へのハードルは下がる。アフィリエイトよりは、ライアットウェアと考える人々も確実に増加するだろう。交通事故よりもサイバー犯罪に巻き込まれる確率の方が高くなる。自動車を運転するほとんどの人が、誰でも5キロオーバー、10キロオーバーくらいは平気なように、ネットを利用するほとんどの人がちょっとしたライアットウェアを利用するのも平気になるのだろう。見つかったら、警察庁のページアクセスして、クレジットカードで反則金を払えばいい。

月々、10万円未満ならよほど運が悪くない限り、罰金くらうことはない、といった会話が当たり前のように交わされ、無法サイバーポリスと戦う方法が紹介されるようになる。

そして次にやってくるのは民間委託であろう。

※本記事は有料購読会員に全文を配信しました

(執筆:Prisoner Langley)

※本稿はフィクションであり、実在する人物・組織・団体等の事物とは一切関係がありません※

【関連リンク】セキュリティコラムばかり書いているLANGLEYのブログ
http://netsecurity.blog77.fc2.com/
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