海外における個人情報流出事件とその対応 第206回 激増するスケアウェア ニューヨークタイムズも悪用の被害 (2)サイバー犯罪における最大の収入源 | ScanNetSecurity
2024.04.24(水)

海外における個人情報流出事件とその対応 第206回 激増するスケアウェア ニューヨークタイムズも悪用の被害 (2)サイバー犯罪における最大の収入源

●ターゲットにされる大手メディア

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●ターゲットにされる大手メディア

 事件については、SophosのGraham Cluleyもブログで書いている。CluleyによるとDaily MailやITV・Radio Timesなどのメディアも以前にマルウェア配布に悪用されたことがあるという。Daily Mailは2008年12月、ITVは2008年2月に報告されている。Radio TimesはBBCの競合企業のITVが所有する。Daily Mail、ITV・Radio Timesともに英国のメディアだ。

 ITV・Radio Timesでは、第三者の広告企業による広告に、Windowsマシンに対してはCleanator、Macに対してはMacSweeperを勧めるマルウェアが仕掛けられていた。サイトにアクセスするとコンピュータがマルウェアに感染していると脅して、ユーザにこれらのソフトを購入するように勧めた。

 Daily Mailの事件は、DailyMail.co.ukのWebサイトのバナー広告が、マルウェアを広めるサイトへリダイレクトされた。このサイトはロシアのサーバーでホスティングされていた。そして、ブラウザの脆弱性を利用して、パッチを行っていないWindowsのPCに悪意のあるコードをダウンロードしようとした。

 4月には米国のメディア、FoxNewsのWebサイトでも、スケアウェアのポップアップ広告が表示されることが報じられた。FoxNewsは映画スタジオ、テレビ局なども持つFox Entertainment Groupが所有するケーブルニュース局だ。FoxNewsのWebサイトにアクセスすると、Personal Antivirusがスキャンを行い、多数のマルウェアなどを探知したと報告して、ウイルス対策ソフトを購入させようとした。このケースでもやはり広告ネットワークを通して、スケアウェアが仕掛けられた。

 多くのメディアがWeb広告の作成と配信を社外に依頼している。ニューヨークタイムズのようなメディアで問題が見つかったときには、サイトのユーザに警告を行い、広告をクリーンアップする責任を問われるべきかという問題については、メディア側で全ての広告を前もって調べるべきというのは、要求しすぎだとCluleyは考える。一方、マルウェアが仕掛けられていないか広告をスクリーニングするべきなのは、広告ネットワークだという。そして、この問題を適切に管理できない広告業者とビジネスを行わないというのが、メディアのWebマスターの責任だという位置づけで捕らえている。

●犯罪者のドル箱、スケアウェア

 偽のウイルス対策ソフトの警告、すなわちスケアウェアはサイバー犯罪者にとって、最大の収入源となっている。研究者によると、一部の犯罪者は偽のセキュリティソフトを売りつけることで、一日に1万ドルを稼ぎ出すという。

 そのため当然、攻撃も増えている。2009年の4月にMicrosoftが発表した報告書によると、2008年の下半期にスケアウェア感染件数は、上半期に比べて48%増加して、800万件近くになっていたという。また、あるセキュリティプログラムについては、Malicious Software Removal Toolを用いて集めたデータを分析して、なんと440万台のPCにインストールされているのを確認した。

 それより1カ月ほど前、3月に、Anti-Phishing Working Groupも、「2008年下旬には、9,200種類以上の異なったタイプのスケアウェアがインターネットで広まっていたと、同様の状況を報告している。2008年中ごろには2,800種類ほどだったというから急増している。また、スケアウェアの数は7月から10月に3倍となっているらしい。

 犯罪者は正規のセキュリティ企業と装って、あるいは人気のある検索トピックに関係して、スケアウェアを仕掛けている。インターネットユーザに人気のYouTubeやTwitterも悪用されることが多いが、SophosのFraser Howardは、NY Timesのようにアクセス数の多いサイトに悪意あるコードを仕掛けることも、犯罪者にとっては非常に有効な方法だと指摘する。その方法の1つがSQLインジェクション攻撃だが、過去数年、問題となっているため、特に多くの大きな組織ではSQLインジェクションの脆弱性がないように対策を行っている。結果として、Webサイトは攻撃するのが難しく、代わって標的になっているのが広告だ。

●訴えられるスケアウェア犯

 このような状況の下、Microsoftが9月17日にスケアウェアに関する起訴を行った。Microsoftの弁護士、Tim Crantonによると、訴えられたのは、DirectAd Solutions、Soft Solutions、qiweroqw.com、ote2008.info、Itmeterで、広告を用いて悪意のあるソフトを配布したり、インターネットユーザにスケアウェアを販売している。

 Microsoftによる起訴を報じたIDG News ServiceのRobert McMillanの記事で、起訴はいわゆるJohn Doe、身元不明、仮名でのものだと説明している。Crantonがブログで、背後の個人の名前は分からないと書いているためだ。

 今日、スケアウェアの活動は数百万ドル水準というから大企業で、複数の大陸にまたがっている。取り締まりが難しい中、Microsoftが起訴に踏み切ったのは、スケアウェアにかかわっている人物を探し…

【執筆:バンクーバー新報 西川桂子】
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