CISOの相談室　第15回不況時のセキュリティ対策不況時のセキュリティ対策予算の現状は？【前編】

　今回から不況時のセキュリティ対策について、3つのテーマに分けて考察します。今回は1つ目のテーマとして、不況時のセキュリティ予算の現状を調査して報告します。

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2009年6月9日（火） 16時45分

　今回から不況時のセキュリティ対策について、3つのテーマに分けて考察します。今回は1つ目のテーマとして、不況時のセキュリティ予算の現状を調査して報告します。

●セキュリティビジネス国内全体市場

　富士キメラ総研の調査によると、セキュリティサービスとセキュリティ製品の国内市場規模の合計は、2007年度では5,249億円（実績）、2008年では5,875億円（見込）、2009年では6,768億円（予測）となっており、その伸び率は、2007年度から2008年度では112％、2008年度から2009年度では115％となっています。また、2012年度の予測としては9,490億円であり、2012年度対2007年度比では、約181％と2007年度以降5年間で2倍近くの市場規模へ達するものと予測されています。この不況時には珍しく、ほぼ全ての産業が停滞している中、セキュリティビジネスだけが高い伸長率で拡大していると言えますね。

◆2007年度 …… 5,249億円（実績）
◆2008年度 …… 5,875億円（見込）
◆2009年度 …… 6,768億円（予測）
◆2012年度 …… 9,490億円（予測）

●不況時にも伸びるセキュリティ市場

　もちろん、この不況に対抗するために多くの企業では、様々な予算を凍結・削減しており、IT投資額やその中のセキュリティ対策予算も例外ではありません。ただし、セキュリティ市場は他と比較するとまだまだ若い市場なので、製品飽和状態や時代変化による枯れた市場というわけではなく、セキュリティ対策が十分ではない企業がまだまだ存在する活気のある市場です。

　また、近年の情報漏えい事故による教訓から、多くの企業ではセキュリティ対策を実施しないでいることは企業存続にかかわる大きなリスクであると知り、同時に単なるセキュリティ対策からコンプライアンスによる、企業価値を高めるセキュリティ対策を積極的に実施する方向性となっています。企業のIT依存が進む中、セキュリティ対策はビジネスに不可欠なインフラの一つになったという意識が経営にも浸透したのかもしれません。

●IT投資におけるセキュリティ投資比率

　ところで、各企業におけるセキュリティ対策の投資は絞られぎみなのでしょうか？それを知るために国内のIT投資額を見てみましょう。2007年度の実績では9兆9,775億円、2008年度の見込みでは9兆6,507億円、2009年度の予測では9兆5,210億円と、若干ですが下降傾向にあります。おっと、不況の影響がもろに出ていますね。ところが、セキュリティ投資額は逆に増加傾向にあるわけですから、各年度の国内IT投資額に対するセキュリティ投資額の比率は、2007年度の実績では5.3％、2008年度の見込みでは6.1％、2009年度の予測では7.1％と次第に伸びています。つまり、IT投資の中でセキュリティの地位が際立って浮上してきたと言えます。

◆2007年度 …… 9兆9,775億円（実績）
◆2008年度 …… 9兆6,507億円（見込）
◆2009年度 …… 9兆5,210億円（予測）

　「国内IT投資動向調査報告書 2008(CIO Magazine, ITR)」によれば、2007年の売上高に占めるIT予算の比率は平均2.9％だそうです…

【執筆：せきゅバカ一代】
＜執筆者略歴＞
セキュリティ業界で15年。
現在は某セキュリティ会社の社長を勤める。
自ら世界中を駆け巡って新技術を収集している。

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