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2017.10.19(木)

海外における個人情報流出事件とその対応 第185回 サイバー犯罪者に悪用されるプリペイドカード (2)便利な反面リスク高まるオープンループ

国際 海外情報

●犯罪者が悪用を続けるプリペイドカード

 プリペイドカードの不正はこれまでにも報告されている。Tenenbaumのケースでは、自分たちでカードを購入して、悪用しているため、一般ユーザが被害を受けていない。しかし、2004年の9月には他人のカードのデータにアクセスして、不正に使用するという事件があった。

 狙われたのは米国最大の小売チェーン、ウォルマートだ。ワシントン州在住の女性は、知人へのお礼として教会仲間とともに、150ドル分のギフトカードを購入した。しかし、カードを受け取った女性が使用を試みたところ、残金がなかったという。同様にあるはずのプリペイドカードの残高がなくなっていたケースが数例、報告された。

 例えば150ドルのプリペイドカードの被害を受けた女性については、カードの持ち主はワシントン州にいたのにもかかわらず、カリフォルニアで数回にかけて使用されていたという。犯人は何らかの方法で、他人のプリペイドカードを不正使用していた。

 また、2006年にはTranax TechnologiesのATMが被害に遭った。出金にプリペイドカードが用いられたが、この事件で不正操作されたのは、カードのデータではなくカードを使用するATMの機械だ。

 被害を受けたATMはバージニア州のガソリンスタンドに設置されていたもので、何者かが5ドル札を使っての出金が20ドル札になるようにいつの間にかプログラムしなおしてしまった。つまり、例えば40ドルの出金で、5ドル札が8枚出てくるようなケースだと、20ドル札が8枚出るようになっていた。

 そして、この犯人はプリペイドカードを用いて出金。被害総額は明らかにされていないが、40ドル引き出す際には160ドルが出てくるようになるということだから、かなりの被害があったようだ。

 やはり2006年に、当時33歳の男性、Robert Arbuckleが、プリペイドカードを使った不正で逮捕された。Arbuckleは、プリペイドカードのプロバイダを通してマーケティング会社、Moola Zoolaを設立して、不正およびマネーロンダリングを行っていた。

 犯罪者はフィッシング詐欺でユーザの個人情報を獲得して、Arbuckleに提供。Moola Zoolaを通して、この情報に基づいてプリペイドカードを作成し、犯罪者に渡していた。

 これらのカードからの現金引き出しは、ロシアが中心で、100万ドルを超える損失を与えた。eBayでの購入にPayPalアカウントを使用した欧州や米国のユーザが被害を受けている。

 犯罪者へ協力することで手数料を受け取っていただけでなく、Arbuckle本人も同様に被害者の口座から現金を不正に獲得していた。逮捕に際して、捜査当局は100万ドル近い価値のある邸宅、レクサスの新車、16万ドルの現金を差し押さえた。

●人気の高まりとともに、リスクも上昇

 プリペイドカードに関わるサイバー犯罪が増加傾向にあるのは、これらのカードの人気が高まっているためだ。90年代初めから流通し始めたカードは、ギフトカードとして利用されることが多い。

 市場としては20年ほどとまだ新しいものの、2005年の353億ドルから、2007年末には3,470億ドルに達すると予測されるなど、米国のプリペイドカードの市場は急速に拡大を続けている。消費者にとっては、お気に入りの店で使う便利なカードであり、一方、小売店や金融機関にとっても大きな利益を生むドル箱となっている。そのため、大規模チェーン店をはじめ多数の小売店が、プリペイドカード事業への参入を続けている。

 しかし、消費者に好評ということは、犯罪者にも人気があることを意味する。サイバー犯罪者だけでなく、テロリストによる悪用も増えていて、捜査当局の注目を集めているのが現状だ。

 プリペイドカードは進化していて、使用方法が広がっているが、それが犯罪に利用されやすい原因の1つでもある。プリペイドカードにはクローズドループと、オープンループがある。クローズドループは特定の場所でしか使用できず、カードの"価値"が利用されるたびに発行会社に通知され、再利用が不可能、つまり補充(リロード)はできない。そして、この"価値"は最終的に発行機関に戻る。

 一方、オープンループは"価値"のやりとりが発行会社に通知されることはなく、自由に何度でも行われる。ATMで現金の引き出しも可能な上に、補充までできる。そして、主要クレジットカードを受け付ける場所なら世界中どこででも、通常は利用できる。

 便利なオープンループのプリペイドカードは…

【執筆:バンクーバー新報 西川桂子】
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