●サイバー戦の現実昨年11月にセキュリティ企業のMcAfeeが、『バーチャル犯罪学報告書』をまとめている。これは、世界のサイバーセキュリティに関する年次報告書で、犯罪組織などの関与が増えていることから、2007年度は、法執行機関やサイバー犯罪の専門家の間で広範囲な調査を行って作成した。今回の調査では、以下のことがわかったという。・ウェブスパイ活動がますます高度化し、国家のセキュリティの大きな脅威となりつつある。以前は興味があるという理由で、情報にアクセスしようとしていたものが、最近では資金力のある組織だった活動となっている・攻撃技術が高度化しているため、オンラインサービスへの脅威が拡大している。例えば、フィッシングとソーシャルエンジニアリングを同時に用いた攻撃が行われている。・ソフトウェアの脆弱性を用いて諜報活動を行ったり、重要な政府インフラネットワークへの攻撃を仕掛けてくる。McAfeeは、政府がインターネットでの諜報活動やサイバー攻撃を後援していると、明らかにしている。2007年は、ドイツや米国、英国をはじめ多くの国が、サイバースパイ活動や攻撃を行っているとして中国を非難したが、報告書では、中国だけでなく120カ国が同様の活動を行っているとした。実際、サイバー攻撃も数件、報じられた。2007年4月にエストニアの金融機関などがDoS攻撃に遭い、サービス不能に陥った。関係が悪化していたロシアからの攻撃だったのではないかと、ささやかれた事件だ。その他、ドイツでは『Der Spiegel』誌がドイツ政府のコンピュータシステムに人民軍と関係するハッカーが侵入したと伝えている。他にも、インドではNational Information Centre (NIC)が、中国のダイアルアップインターネット接続から繰り返し攻撃された。300の省庁や国防関係者のe-mailアカウントが侵入を受けたとも言われている。オーストラリアやニュージーランドでも同様に、政府のコンピュータネットワークが攻撃を受けたという報道があった。オーストラリア政府は肯定も否定もしなかったが、ニュージーランド政府では、クラーク首相が侵入の事実を認めている。しかし、トップシークレットレベルのデータは無事だったとしている。すでに国家がスポンサーしたマルウェアも見つかっている。それも、最近のマルウェアは以前のものと比べてずっと複雑になっているだけにたちが悪い。米国防総省への侵入に用いられたソフトウェアは、個々のハッカーが行うよりずっと大きなリソースでテストされていて、調整、統合された極めて高度な攻撃であることから…【執筆:バンクーバー新報 西川桂子】──※ この記事は Scan購読会員向け記事をダイジェスト掲載しました購読会員登録案内http://www.ns-research.jp/cgi-bin/ct/p.cgi?m-sc_netsec