●34.ソフトウェア開発委託契約の成否ソフトウェアの開発の手順における(1)「システム化の方向性」(2)「システム化計画」といった、システム開発委託契約の前提となる、いわゆる超上流工程は、ソフトウェア開発の基盤にあたる部分です。その基盤がしっかりしなくては、その上に建設されるプログラム開発が成功しないことはいうまでもありません。超上流工程において、委託者・受託者間の合意が不十分なまま見切り発車した結果、紛争に発展したという事例は枚挙にいとまがありません。ソフトウェア開発委託契約においては、しっかした契約書が作成されないまま、業務委託あるいはソフトウェア開発が進展することが少なくないなど、この業界特有の実情があります。そもそもソフトウェア開発委託契約が成立したかどうかを巡るケースについて検討いたします。●35.東京地裁平成18年2月10日判決(平成16年(ワ)第14468号損害賠償等請求事件)この判決では、原告が主張する「事業スキームの合意」が成立したかどうか、被告が「事業スキームの合意」に違反したかが争われた事案であり、原告は著作権侵害を理由に原告ソフトウェアの使用差止を求めると共に、ノウハウや著作権侵害の主張に基づく請求もして、損害賠償として5億円の支払いを求めました。判決が認定した事実関係は以下のとおりです。(1)原告は、コンピューターや関連機器の設計,導入,運用に関するコンサルティング、ソフトウェアの輸入、開発及び販売等を目的とする株式会社であり、被告は松下電器産業株式会社です。(2)被告は、従来のインターホンを機能高度化した次世代インターホンシステム(以下「本件システム」という。)の開発を企画した。本件システムは、大別すると、[1]各住戸に設置される端末、[2]各マンションの共同玄関、管理人室等に設置される機器類、[3]リモートコントロールセンターに設置される機器類から成り、これらがインターネットで接続され、多くのソフトウェアを利用して運用される。(3)被告は、平成14年10月ころ、原告との間で、本件システムの共通ライブラリ部分(以下「原告ライブラリ」という。)につき、使用許諾契約を締結し、導入した。被告は多数のマンション等において本件システムを販売した。(4)原告は、平成14年12月27日ころ、被告との間で、本件システムの保守業務について、保守料金月額500万円の保守契約を締結した(「本件保守契約」)。(5)原告と被告は、平成15年8月15日、原告ライブラリ2866ライブラリにつき、その使用権を対価840万円(1ライブラリ当たり2930円)で被告が一括購入する契約を締結した。同年9月18日には、原告ライブラリ348ライブラリが同一条件でこれに追加された(「本件一括購入契約」)。(6)原告と被告は、本件保守契約の更新に当たり、主として更新後の保守料金額につき協議したが、合意に至らなかった。このため、被告は、原告に対し、平成15年10月29日、同年11月30日をもって本件保守契約を終了させる旨の意思表示をした。このように判決は、平成15年10月に、原告と被告の関係が破綻したと述べています。判決を読み進むと、それより以前はどうだったかとの疑問が湧きます…【執筆:弁護士・弁理士 日野修男】nobuo.hino@nifty.com日野法律特許事務所http://hino.moon.ne.jp/──※ この記事は Scan購読会員向け記事をダイジェスト掲載しました購読会員登録案内http://www.ns-research.jp/cgi-bin/ct/p.cgi?m-sc_netsec