SCAN DISPATCH は、アメリカのセキュリティ業界及ハッカーコミュニティから届いたニュースを、狭く絞り込み、深く掘り下げて掲載します。── Storm Wormの威力、感染力が膨大なことは、読者の人ならご存知だろう。では、Storm Worm が作り出した分散型コンピューティングのパワーを、世界のスーパーコンピューターのパワーと比べると一体どうなるだろうか? オーストラリアのコンピュータ・サイエンティストのピーター・ガットマン氏が最近実際に試算してみた。まず、2007年6月現在最もパワフルなスパコンの1位から10位までは以下の通りだ(*1)。1. BlueGene/L - eServer Blue Gene Solution (IBM) 128K CPUs 32TB RAM2. Jaguar - Cray XT4/XT3 (Cray Inc.) 22K CPUs 46TB RAM3. Red Storm - Sandia/ Cray Red Storm (Cray Inc.) 26K CPUs 40TB RAM4. BGW - eServer Blue Gene Solution (IBM) 40K CPUs 10TB RAM5.New York Blue - eServer Blue Gene Solution (IBM) 37K CPUs 18TB RAM6. ASC Purple - eServer pSeries (IBM) 12K CPUs 49TB RAM7. eServer Blue Gene Solution (IBM) ?8. Abe - PowerEdge 1955 (Dell) 10K CPUs 10TB RAM9. MareNostrum - BladeCenter JS21 Cluster (IBM) 10K CPUs, 20GB RAM10. HLRB-II - Altix 4700 (SGI) 10K CPUs 39GB RAM 7位のeServerを6位のeServerと同じだと仮定しても、全CPUが300K強、RAMが254TB強だ。 一方、現在Storm Wormのボットネットが“所有”するPCは、推定で100万から1,000万台と言われている。ガットマン氏は「平均的なPCが2.3〜3.3GHz Single Core CPUで、1GBのRAMであるという調査を(*2)基準にすると、Storm Wormのクラスターは、2.8GHz P4sで1〜10M、RAMは1〜10Petabytesということになる」と指摘している。スパコン上位10台が束になっても適わない能力だと言えるのだ。 このStorm Wormは、ルーマニアのセキュリティ企業BitDefender社の8月の統計では、24.7%でマルウエア第1位だ。 ちなみに、今週になって米国のITセキュリティ企業が相次いで、NFLのファンをターゲットにしたStorm Wormのスパムが急増していると警告している。中でもSophos社は、こうしたスポーツファンをターゲットにした攻撃が増えていることについて、70%の社員がなんらかのファンタジー・スポーツ・リーグに参加しており、そのうちの65%が会社から自分のチームの成績をチェックしているという同社の調査をあげて、企業としても見逃せないトレンドであると指摘している。 Storm Worm は、スパムメールの受信者がメール内のリンクをクリックして偽のNFLサイトに行くことによってダウンロードしてしまうもので、「NFLTracker」とか「ファンタジー・フットボール・ニュースレター」などと、スポーツ・ファンの心をくすぐるスパムになっているところがミソ。 それにしても、これだけのCPUパワーを持っているStorm Botnetだが、「単なるスパム配信のためならばこれほどのパワーはいらない。一体何をするつもりなのか?」とガットマン氏が投げかける疑問もうなずける。【執筆:米国 笠原利香】(*1)TOP500 Supercomputer Siteshttp://www.top500.org(*2)Valve Survey Summaryhttp://www.steampowered.com/status/survey.html【関連URL】eBayのアカウントを盗む攻撃、出品歴が長く高評価のIDほど高値で売買https://www.netsecurity.ne.jp/2_9941.htmliPhone購入者詐欺用ボットネットが発見されるhttps://www.netsecurity.ne.jp/2_9617.htmlボットをあぶり出せ!FBIのボット撲滅作戦 (1)https://www.netsecurity.ne.jp/2_9534.html