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2018.06.20(水)

言論統制に利用されるインターネットセキュリティ法制度(1)

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●サイバー犯罪条約の国内法整備の欺瞞性

本年8月8日、郵政法案が参議院本会議で否決されたことを受けて、小泉首相は衆議院を解散した。それに伴って、「犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案」が廃案となった。

この法案には、欧州評議会のサイバー犯罪条約の国内法整備のための法案が含まれていた。サイバー犯罪条約は、2001年11月に、欧州評議会で採択された条約であるが、欧州評議会の加盟国のほか、条約の策定段階からオブザーバーとして参加していたアメリカ合衆国、カナダ、オーストラリア、日本、南アフリカも署名しており、そのために単なるヨーロッパだけの条約にとどまらず、サイバー犯罪に関する世界初の包括的な国際条約である。同条約は既に2004年7月に発効している。

我が国も、2004年の通常国会において、サイバー犯罪条約を批准することを決議しているが、正式にはまだ批准していない。また、先進主要国でサイバー犯罪条約を批准した国は1カ国も存しない。

サイバー犯罪条約は、コンピュータ・システムの完全性や、コンピュータ・データの機密性、完全性、利用可能性を保護するために、それを侵害する行為を犯罪化することを締約国に求めており、いわゆる情報セキュリティそれ自体を保護法益とする考え方をとっている。

もっとも、我が国は、伝統的に情報セキュリティそれ自体を保護法益とする考え方をとっていなかったことから、今回廃案となった法案には、「不正指令電磁的記録に関する罪」として、電子ウイルスを作成したり提供する行為等を処罰する規定だけが盛り込まれていたに過ぎない。

また、サイバー犯罪条約が、コンピュータが使用された犯罪について締約国に立法化を求めていた様々な捜査手法のうち、今回廃案となった法案には、リモート・アクセスや通信履歴の保全要請など一部の捜査手法だけが盛り込まれていたに過ぎない。

つまり、日本政府は、サイバー犯罪条約に署名したものの、サイバー犯罪条約の先進的な部分である情報セキュリティを保護法益として犯罪化することまでは考えておらず、現行法の範囲内で、形だけ法整備をすることでお茶を濁そうとしているのである。

【執筆:山下幸夫(弁護士)】

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全文はScan Security Management本誌をご覧ください。
http://www.ns-research.jp/cgi-bin/ct/p.cgi?ssm01_ssmd
《ScanNetSecurity》

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