日本貿易振興機構の統計によると、ロシアのGDPは日本の20分の1程度であり、したがってロシアの通信市場も20分の1の規模と考えられている。日本の情報通信産業が全体で約120〜130兆円とされていることから考えると、ロシアの情報通信産業の規模はざっと考えて6兆円程度の規模であると推測される。日本を含めて、世界的には情報通信バブル、いわゆるITバブルと呼ばれる現象があったが、ロシアはITバブルの影響を受けず、1998年から緩やかなながら順調に市場規模が拡大してきているようだ。ロシアのインターネットユーザーの数も年々倍増しており、モスクワや大都市のサンクト・ペテルブルグを中心に少なく見積もっても200〜300万人、一説には900万人程度のユーザーがいるともされている。なかなか正確な統計を把握しにくく、IT関連の底力がどれほどあるのかが見えにくい感じのあるロシアではあるが、じつはソフトウェア開発においては、非常にハイレベルな技術力を有していることだけは間違いない。とりわけ、アンチウイルスソフトの開発においては世界最高水準のソフトウェアがある。そのひとつがロシアのソフト開発会社であるDr.Web社の「Dr.Web for UNIX」である。
Dr. Web社は、アンチウイルスプログラムの開発者であるIgor Daniloff氏によって2003年12月に設立された。Dr.Web社のCEOであるBoris A.Sharov氏は、自社について「ウイルスやセキュリティに関するスペシャリストの集団である」と語る。本社はモスクワ市にあるが、会社設立以前からサンクト・ペテルブルグにおいてアンチウイルスソフトの研究開発が着々と進められていた。開発者のIgor Daniloff氏が率いる開発部門は現在もサンクト・ペテルブルグ市にある。アンチウイルスセキュリティ分野に熟練した30人以上の専門家が現在も日々、Dr.Webの開発を続けているのだ。