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2017.08.23(水)

【安全な回線】(執筆:office)

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 来年10月から建設省関係直轄工事で「電子入札」が実施されることがCALS(生産・調達・運用支援統合情報システム)・EC(電子商取引)推進本部で決定されたとのニュースが流れた[1]。報道によれば、初年度(2001年10月〜2002年3月)が1件2億円以上の工事と、コンサルタント業務など100件がその対象。2002年度、2003年度と対象を順次拡大し、2004年度はすべての直轄工事、コンサルタント業務の約4万件が対象となるとのことだ。こうして今後ますますインターネット上で巨額のビジネス情報が飛び交うこととなる。

[情報遮断の危険性]

 入札では決められた期間内に確実に相手に入札情報を届けなければならない。入札に参加する予定の会社ならば、入札時期に確実に入札できるような安定なマシンや回線品質確保のことを考えているであろう。また入札システムを運営する側も、平等・安全に入札が行われるような強固なマシンと高品質の回線を確保しなければならないのは当然のことだ。

 これを裏返して考えると、競合する会社同士が入札に用いられるマシンや途中経路を攻撃して相手の通信を妨害する可能性があることに気づくであろう。今年2月に起こったYahoo!やe-BayへのDDoS (Distributed Denial of Service: 分散型サービス拒否)による通信妨害は、個人ないしは小規模なグループで実行可能だったようである。数億円のビジネスプロジェクトならば、数百万円のコストをかけて通信妨害が行われる可能性さえありえよう。これほどの対価を払って非合法な妨害工作がなされた場合には、いかな高速回線や高速信号中継システムであろうとも物量作戦やDoS攻撃などの餌食となって径路遮断させられてしまうであろう。

[情報流通停滞のメカニズム]

 インターネットのプロトコル(通信手順)として利用されているTCP/IPには、情報が途切れてしまう危険性が本質的な特性としてある。TCP/IPで大量の情報を扱う場合には、通信開始まで不定な時間待たされ、処理が始まっても不定な速度で処理される。あまりに長い時間処理が完了しない時には、末端のコンピュータや中継機器でタイムアウト(時間切れ)として通信に失敗したと見なさざるを得ない。

 この特質につけこんで、インターネットではいとも簡単に情報流通妨害ができる。妨害する回線に、大勢でよってたかってその回線経路を経由するような通信要求を出し、この大量の無駄な通信処理のために必要な情報が処理できなくなるようにすればよい。貧弱な回線やマシンに過度の情報処理要求をすると、うまく情報が交通整理されないので、結果的に致命的な交通渋滞を起こす。そして、多くの情報処理が途中でとぎれたままタイムアウトしたり、ついにはシステムダウンしたりするのだ。

 DDoSをはじめとするDoS攻撃も原理的に同様で、コンピュータがインターネットで用いられるICMPパケットなどの特殊信号処理を他の情報処理より優先することを利用している。この特殊信号を大量に送ったり、この信号の通信が途中で止まるようなことを故意にすると、コンピュータはその特殊信号の処理だけを続け、あるいは来たるべき残りの特殊信号を待ち続け、他の情報は永遠に処理されない。

[品質保証された回線]

 予期せぬ情報停滞が起こらないように通信回線の品質(帯域や遅延)の保証することをQoS (Quality of Service) という。QoSを目指した通信方法はいくつも提唱されており、超高速・高機能次世代インターネットのためのQoSプロトコル[2]も日本で開発されている。本年12月には開発が新フェーズに入る予定とのことで、その折には本特集でもセキュリティの部分を紹介したいと考えているが、残念ながらこれらの新しいプロトコルはすぐ一般に使えるものではない。


office
academic office
http://www.office.ac/

[1] http://www.ogawasekkei.co.jp/enyuusatu.html
[2] http://www.real-internet.org/


(詳しくはScan本誌をご覧ください)
http://www.vagabond.co.jp/scan/

《ScanNetSecurity》

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