IT コミュニティの大部分は、クラウドは魔法のように素晴らしいから積極的に使おう、という考え方を許容する姿勢を見せてきたし、さらにはそうした考え方を推進しようとする人々もいた。そして私たちの多くは、その宣伝文句を疑わなかった。
私は、素晴らしいという触れ込みのドラッグ&ドロップ操作型ハイブリッドクラウドストレージ管理システムのデモを、数週間前に目にした。その際、私も一瞬クラウドの宣伝文句を鵜呑みにしかけてしまった。何しろその画面には、オンプレミスとクラウドのボリュームが表示され、数回クリックしてマウスでドラッグするだけで、ペタバイト単位のデータをクラウドに転送してくれたのだ。そればかりか、データとアプリケーションの対応付けが両方の環境で行われた上に、セキュリティポリシまで転送してくれていた。
しかしその後、私はこの魔法のようなシステムを発明した人々に、ある点について尋ねた。データを転送した際に発生した費用について、ユーザに対して何らかの情報が提示されるのか、という点だ。
返ってきた答は「いいえ、その機能は近日中に追加します」だった。
このベンダ、そして実際のところあらゆるベンダが、何食わぬ顔をしてこのような嘆かわしい返事をしやがるのには、理由がある。料金がかかったとしても、クラウドに移行して柔軟な運用が可能になれば、すべてが好ましい方向に進んでいくと、私たちが何年にもわたって聞かされてきたことがその理由だ。
このベンダは、物理的な機器ではなく、クラウドベースのストレージソフトウェアの提供に活路を見出しているわけだ。そのため、このベンダが気にする料金とは、そのコードのライセンスがいくらで売れるかという点だけだ。クラウドは魔法のようなものだというナラティブが浸透しているため、細かい点まで誰も気にしない。
しかし、実際には、クラウドはこれまでずっとまとまりを欠きながら肥大化してきた傾向があるし、管理を誤る可能性があるし、または公称の性能を発揮できないなどの問題等を抱えてきた。つまり、クラウドは、この点においては、その他のあらゆるコンピューティングリソースやストレージリソースと変わらないのだ。
先週、AWS と Microsoft は、それぞれのクラウド料金が高すぎることを顧客に気づかれてしまったと認めた。