コインハイブ事件が最高裁で無罪判決「原判決を破棄しなければ著しく正義に反する」 | ScanNetSecurity
2024.04.25(木)

コインハイブ事件が最高裁で無罪判決「原判決を破棄しなければ著しく正義に反する」

 最高裁判所は1月20日、 不正指令電磁的記録保管被告事件についての判例を公開した。

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 最高裁判所は1月20日、 不正指令電磁的記録保管被告事件についての判例を公開した。

 同判例は、Webサイトの閲覧者の同意を得ることなくその電子計算機を使用して仮想通貨のマイニングを行わせるプログラムコードが不正指令電磁的記録に当たらないとされた事例として公開されている。

 同事件は、被告人が音声合成ソフトウェアを用いて作られた楽曲の情報を共有するインターネット上のWebサイト「X」運営に際し、閲覧者の同意を得ずに使用する電子計算機のCPUに仮想通貨モネロの取引履歴の承認作業等の演算を行わせて報酬を取得しようと考え、2017年10月30日から11月8日までの期間にプログラムコードをサーバコンピュータ上のXを構成するファイル内に蔵置して保管したというもの。

 同事件当時、Webサイトの収入源として閲覧者の同意を得ることなくその電子計算機を使用してマイニングを行わせるCoinhive(コインハイブ)というWebサービスが、CoinhiveTeamという事業者から提供されていた。

 同事件では、被告人がXの収入源としてコインハイブによるマイニングの仕組みを導入するためにプログラムコードをサーバコンピュータに保管した行為について、不正指令電磁的記録保管罪に問われた事案で、争点としては、プログラムコードが刑法168条の2第1項にある「人が電子計算機を使用するに際してその意図に沿うべき動作をさせず、又はその意図に反する動作をさせるべき不正な指令を与える電磁的記録」に当たるか否かであった。

 被告人は同事件で、プログラムコードにて閲覧者の電子計算機のCPU使用率を調整する値を0.5と設定したが、この数値でマイニングを実行すると閲覧者の電子計算機の消費電力が若干増加したりCPUの処理速度が遅くなるが極端なものではなく、閲覧者が気付くほどではなく、一般的なWebサイトで広く実行されている広告を表示するプログラムと有意な差異はなかった。

 最高裁は不正指令電磁的記録に関する罪は、反意図性と不正性のあるものについて一定の要件の下に処罰するものであるとしている。

 その上で、当該プログラムコードには、閲覧者の同意を得ることなく電子計算機に一定の負荷を与え、閲覧者にマイニングの実行を知る機会や拒絶する機会が保障されていないなどの反意図性は認められるが、Webサイト運営者が閲覧を通じて利益を得る仕組みは情報の流通にとって重要で、社会的に受容されている広告表示プログラムと比較しても閲覧者の電子計算機に与える影響においても優位な差違は認められず、マイニング自体も仮想通貨の信頼性を確保するための仕組みで社会的に許容し得ないものとは言えず、不正性は認められないと判断、当該プログラムコードは不正指令電磁的記録とは認められないと結論づけている。

 最高裁では、被告人を罰金10万円に処した原判決に対し「不正指令電磁的記録の解釈を誤り、その該当性を判断する際に考慮すべき事情を適切に考慮しなかったため、重大な事実誤認をしたものというべきであり、これらが判決に影響を及ぼすことは明らかであって、原判決を破棄しなければ著しく正義に反すると認められる。」と、原判決を破棄し、本件控訴を棄却するとしている。

 同事件では被告人に対し、神奈川県警が家宅捜索と取り調べを行っていた。なお神奈川県警は、2012年のパソコン遠隔操作事件でも誤認逮捕を行っている。

《ScanNetSecurity》

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