一般社団法人日本CTO協会は10月8日、デジタル庁の創設に向けた提言を発表した。日本は世界で最も少子高齢化が進み、深刻な人口減少や労働力不足といった課題を抱える中で「人々の健康で文化的な暮らし」を継続するために、同協会では「コンピューターが働きやすい社会」の実現が必要と考え、非人間的な業務をコンピュータに任せ、ヒトにしかできない本質的なことに人間が集中できるよう変革を起こし、そのために業務効率向上を目的とするデジタル化、コンピューターをうまく働かせるソフトウェアエンジニアの開発者体の向上が必須となる。同協会では、ソフトウェアエンジニアリングにおける生産性の前提となる開発者体験の向上を実現するために必要な取り組みについて、以下の5項目を提言した。1. ソフトウェアコントローラビリティの獲得行政がITサービスによる継続的な価値創出に対して主体的に関わるために、ソフトウェア開発のノウハウを組織内に蓄積できるような開発体制を持つ必要があり、政府CTOとしてアーキテクチャーレベルでレビューを行える能力をデジタル庁が備えなければならない。2. ソフトウェアファーストな法整備現行の法令や枠組みにソフトウェア・サービスの実装を合わせると不均一で使い勝手の悪いサービスができ上がってしまうため、国民のサービス体験向上を目的に設計を行い、それに伴って必要な法改正を提案できることが重要。3. Nation as a Service(サービスとしての国家)行政がサービスをつくるべきところと民間のクリエイティビティを活用すべきところとを分ける必要がある。行政機関が行うべきは直接国民に触れるインタフェースでは無く、民間が活用しやすいAPIサービスとして行政の機能をネットワークを通じて提供することを第一に考えるべき。4. データ駆動とKPIすべての行政手続きを電子化し、国民のプライバシーに十分に配慮しながら、さまざまな行政活動や国民状況のデータをリアルタイムに蓄積・分析・可視化し、明確な数値目標を持って改善を進める必要がある。5. 失敗を許容する文化と透明性官僚組織とデジタル組織のカルチャーでミスマッチなのは、失敗を許容する文化がないことで、国民の大事な情報を預かる官僚組織には失敗は許されず、許容される幅が少ないため行動が遅くなり、ミスは隠蔽され記録を残さなくなる。