急拡大する太陽光発電市場、CIS薄膜技術の可能性(ソーラーフロンティア) | ScanNetSecurity[国内最大級のサイバーセキュリティ専門ポータルサイト]
2017.10.24(火)

急拡大する太陽光発電市場、CIS薄膜技術の可能性(ソーラーフロンティア)

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 東日本大震災は、化石燃料に頼らない新エネルギーシフトを人びとに意識づけた。とりわけ一般消費者の間では住宅向け家庭用蓄電池や太陽光発電システムなどに対する注目が大いに集まり、「スマートグリッド」「スマートハウス」に代表されるITを活用した高度なエネルギーマネジメントも現実のものとなりつつある。


■2015年度には1兆5000億円市場に成長する太陽光発電

 矢野経済研究所が9月に発表した市場予測調査によれば、国内の太陽光発電システム市場は、2009年11月からスタートした余剰電力の固定価格買取制度の影響により急拡大。2009年度には3856億円だった市場は、2011年度には6500億円超になると予測している。さらに2012年からは再生可能エネルギーによる発電電力の全量買取制度がスタートし、この成長はさらに加速、2015年度には1兆5000億円に達すると見込んでいる。

 市場の成長とともに太陽光発電への参入業者は相次いでおり、競争は激化、各社は開発にしのぎを削り、太陽電池パネルの技術は著しい進化を遂げている。発電効率の向上、屋根の形状に合わせた多彩なラインナップ、そしてコストダウン。こうした中で注目を浴びているパネル新素材が「CIS(カルコパイライト系)太陽電池」だ。

 CISは素子を構成する銅(Copper)、インジウム(Indium)、セレニウム(Selenium)の頭文字からとったもので、これまでのシリコン系太陽電池よりも発電特性と耐久性・信頼性に優れるのが特徴だ。今回編集部では、この新技術に着目し、CIS薄膜太陽電池製造量で世界トップの地位にあるソーラーフロンティアを取材した。


■世界最大級の太陽電池工場

 ソーラーフロンティアは、パネルの開発から製造・販売までを一貫して自社で手がけるメーカーだ。昭和シェル石油の100%子会社として2006年に設立された昭和シェルソーラーを母体とする。2007年には宮崎工場宮崎プラントで商業生産を開始し、2009年には宮崎工場が第2プラントが稼働するという急ピッチで事業規模を拡大していった。2010年に現社名に改称。今年には年間生産能力1GWという世界最大級の太陽電池工場を宮崎県国富町で稼働させた。

 ところで、昭和シェルといえば石油元売り会社として、ガソリンスタンドなどでもよく見かける身近な存在。同社が、太陽電池の研究に乗り出したのは30年以上も前の1978年のこと。「大きなきっかけは、1970年代のオイルショック。この問題を契機に化石燃料以外のエネルギー源を研究する国のプロジェクト『サンシャイン計画』に参画したことだった」。こう説明するのは、同社ブランド&コミュニケーション部 中田雅之氏だ。

 ではその石油元売り会社が、本業とは一見関係の薄い太陽電池の研究開発をなぜ始めたのか。「少なくとも国内に限っていえば、これから石油需要は大きくは伸びない。石油事業に並ぶビジネスの柱を昭和シェル石油として打ち立てていく必要があるということ、また、お客様が使うエネルギーが変わるという時代の流れに対応して、新たなエネルギーを事業化していきたいということ、この2点が大きな理由として挙げられる」と中田氏。


■「CIS太陽電池は効率・耐久性の両面で伸びしろの大きい次世代技術」

 研究のスタートから90年代にかけてはシリコン系を中心に研究開発を進めていたが、CISという技術に着目する機会を得たのは1993年のこと。NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の委託を受けて、具体的な研究が始まった。その結果、CISは発電効率や耐久性の面で“伸びしろ”が非常に大きい技術であるという手ごたえを得たという。

 CIS太陽電池の特徴は3つある。1つめは幅広い光を吸収できる分光感度特性。2つめは、太陽光に当てると定格の出力に対して実際の出力が上昇するという特性。さらに3つめには、結晶シリコン系太陽電池では影になるとモジュール全体の出力が絶たれてしまうのに対し、CIS太陽電池ではその素子特性により影の部分があっても安定して発電するという点だ。原材料の使用量が少ないゆえの省資源性やリサイクルの簡便性など、CISのメリットとして挙げられる特徴は数多い。エネルギーペイバックタイム(パネルの製造に際し使用したエネルギーを回収するまでの期間)は1年を切っているという。

 しかし、カタログ上での発電スペックではCISは必ずしも突出した性能を持っているわけではない。1平方メートルのモジュールに当たった太陽光をどれだけ電気に変換できるかを示す「モジュール変換効率」という指標があるが、同社の「SF150-K」の場合は12.2%と、15%を超える製品が登場している他社モジュールと比較して見劣りすらする。しかし、「CISは実発電量で見てほしい」と中田氏はいう。


■利用者のベネフィットに直結するのは「実発電量」

 「発電効率のスペックは、一定条件のもとで計測されるいわばピークパワー。実際に設置すれば日照量は土地によって違うし、温度の変化や影が差すこともある。総合的な環境条件を踏まえた上で発電される電気、つまり実発電量がお客様のベネフィットになって返ってくる」(中田氏)。

 例えるなら、自動車のカタログ燃費と実際の燃費との違いのようなものだろう。カタログに表記される変換効率は太陽電池選びにおけるひとつの指標にはなるが、変換効率の高いモジュールがそのまま実発電量に直結するわけではない。実際に、住宅設備コーディネーター菱田剛志氏が継続的に計測した発電量データによると、CISの実発電量は他のシリコン系太陽電池に匹敵する数値を得ていることが明らかになっている。

 また、CIS太陽電池は国内の主要メーカーとしては唯一、20年の保証期間を実現している。「耐久性・信頼性は非常に重要で、お客様のベネフィットにもつながってくる部分。CISは経年劣化が比較的少なく、開発側で20年の耐用年数は持たせられると判断した。JAXAの協力により宇宙での実験もおこなうなど、保証は確実なデータに基づいて提供している」(中田氏)。

 また、シリコン系太陽電池は熱に弱いとされているが、CISは高熱に比較的強く、劣化も小さい。この耐熱性能は、中東のサウジアラビアなど赤道周りの高温地域では複数のプロジェクトが採用され、稼働している。

■太陽光発電を通じて日本が元気になるストラクチャーをつくっていく

 ただし、太陽電池が身近な存在になりつつあるとはいえ、一般的な住宅用でも200万円から300万円程度と、まだ非常な高価な買い物でることには変わりはない。コストダウンに期待したいところだが、「いちばん大きく変わるのは、技術の向上」だと中田氏はいう。

 「CIS太陽電池の技術はまだまだ伸びしろがある。工場の生産効率向上や、生産過程の見直しなど、取り組む余地はある。また、モジュールだけではなく、パワーコンディショナーなどの関連システムのコストダウンも必要」との認識を示す。

 住宅向けの太陽電池市場は、国内の電機メーカーを初めとして海外からの参入も相次いでおり、開発競争はさらに加熱するだろう。しかし、ソーラーフロンティアでは自社のCIS太陽電池に強い自信を持っている。

 「当社はCISを世界でも初めて大量生産した。製造ノウハウは蓄積できており、世界トップの生産技術を今後も維持していく自信はある。もともと太陽電池の研究開発の世界は日本がリードしてきた分野であり、この産業を通じて日本が元気になっていくストラクチャーをつくっていければ、と願っている」(中田氏)。

【インタビュー】急拡大する太陽光発電市場、CIS薄膜技術の可能性……ソーラーフロンティア

《北島友和@RBB TODAY》

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