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2018.08.20(月)

紅客聯盟はいかにして詐欺ビジネスの代名詞となったか(Far East Research)

国際 Far East Research

png「COG情報セキュリティフォーラム」閉会後の9月23日早朝、中国紅客聯盟の創始者Lion(林勇)が同聯盟の10年ぶりの再編を、公式Webサイトおよび自身の微博(中国版Twitter)で宣言したのは本連載で報じた通りだ。「再編」とされているものの、事実上の復活と考えていいだろう。

この声明がなされた意味と目的を考えるために、紅客聯盟の歴史と経緯について少々解説が必要かもしれない。

2004年12月31日に中国紅客聯盟が解散した後、「紅客」を名乗る組織が雨後の筍のように続出。筆者がざっと調べても、現在確認できる紅客聯盟の亜種はこれだけある。

◆偽「紅客聯盟」サイト
中国紅客聯盟 (Lyon主催) http://www.honker.net/
中国紅客聯盟 (冰児主催) http://www.cnhonkerarmy.com/
中国紅客聯盟 (王子主催) http://www.huc.me/
T.R.A 中国紅客大聯盟 http://www.honker.org.cn/
中国紅盟 http://www.redhacker.cn/ (T.R.A 中国紅客大聯盟のフォーラム、ドメインが別のため1つにカウント)
中国紅客 (冷月主催) http://www.cnhuc.com/
中国紅客 http://www.chinahonker.com/
紅客聯盟 (紅客吧) http://www.hongke8.com/
中国紅客聯盟 (小煩主催) http://www.cnhonker.com.cn/
紅客聯盟 http://www.red.org.cn/
中国紅客聯盟RHU http://www.chinahonkerunion.com/

◆「紅客聯盟」類似サイト
紅盟安全網 http://www.hmaqw.net/
陝西紅客聯盟 (温振源主催) http://www.chinesehonker.net/
華中紅客基地 http://www.my3800.com/
中華紅客基地 http://bbs.prchonker.com/
中国紅客安全網 http://bbs.hongker.net/
中国紅客聯盟08小組 http://www.huc08.com/
中国紅盟安全網 http://www.runet.cn/

なお昨年の尖閣諸島問題をめぐり対日攻撃を実行したとされる紅客聯盟は「冰児」が主催している組織だった(実際には、彼らが攻撃に荷担したのは2日にも満たない)。

●愛国精神のもと研鑽する青年技術者、初期「紅客」

ご存じの方も多いと思うが「紅客」とは、簡単に言えば「中国流ハッカー」を意味する。一般的なハッカーは「黒客」。中国語で暴力団・マフィア組織を黒社会と呼ぶ。一般的に非合法行為を意味する「黒」(hei)と、特定の属性を有する人士の意味をもつ「客」(ke)との結合である「黒客」(heike)が、英語のhackerと発音上近似するため、おもに大陸の普通語で多用される「ハッカー」の表記として定着した。なお、台湾では「駭客」(haike)の方が多用される。

また中国では「紅」(hong)が五星紅旗の基調色であり、中国共産党イデオロギーにおける徳性を代表する色でもある。そのためハッカーを意味する「黒客」(hei)の「黒」を「紅」(hong)に転じることで、ハッカーに対し愛国的イメージの付加価値を添え、中国の情報セキュリティを護り国益のための電子戦を自発的に行う義勇軍、もしくは「水滸伝」を連想させるサイバー侠客として、そして平時の際は愛国精神のもとで粛々と技術を研鑽する青年技術者の姿を演出することに成功した。この「中国独自の愛国的ハッカー」という意味から「紅客」(honker)が定着した(紅客はピンインではhongkeとなる。ただし紅客はhonkerとして定着し、hongkerという綴りは使用されない)。

●林勇(Lion)、「中国紅客聯盟」設立

長沙航空職業技術学院を卒業し、中国の官製サイバースパイ企業疑惑のある「広州金華誠科技有限公司」に務めていた当時21歳の林勇は、Lion(coollion)というハンドル名で2000年12月に「中国紅客聯盟」を設立。翌年の「米中サイバー戦争」で中国側の攻撃を扇動し、ウェブ改ざんやDDoS等のハッキング行為に「中華愛国的」という付加価値をつけた。「紅客」の始まりである。

江沢民時代の偏狭なナショナリズム教育を受けつつ、これまでにないコミュニケーションツールとしてインターネットを享受しはじめた、当時の若者たちの一部が「紅客」に熱狂した。だがLionは「自身の技術力のなさ」を認め、これを理由に2004年末、自ら設立した紅客聯盟を解散してしまう。

●「中国紅客聯盟」ブランドを使ったビジネスの発展

しかしこのとき、すでに「紅客」は一種のブランドと化していた。とくに愛国主義教育の影響が希薄ないわゆる「90后」(1990年代生まれの世代)にとって、「米中ハッカー戦争と紅客連盟の擡頭」とは、彼らがリアルタイムでは経験しえなかった、中国ネット史上の伝説なのだ。そのため米中ハッカー戦争を体験したと称する古参ハッカーらの言動は、「黒客志望」の若い世代に対し、強い伝染力を持った。

このことが「紅客ブランド」を一人歩きさせてしまった。亜種組織が乱立し、主催者はそれぞれ「米中ハッカー戦への参戦経験」「オリジナル紅客聯盟の元核心メンバー」を名乗った。また亜種組織のいくつかは、本家紅客聯盟の再編を装いつついまも活動している。

これら現在の亜種「紅客聯盟」の多くが、「90后」を対象としたハッキングトレーニングビジネスを展開している。「米中ハッカー戦への参戦経験」という権威付けを最も前面に押し出しているのは、たとえば上記亜種組織のひとつ「T.R.A 中国紅客大聯盟」だ(この組織は「紅客」を上海で商標登録しているという)。

●そして詐欺的ネットビジネスの代名詞へ

「初期の紅客聯盟の核心メンバーで、米中ハッカー戦に参戦した私がQQやHotmailアドレスのハッキング方法、ウェブサイトの改ざんテクニックを教えます」と宣伝すれば、堅実なITセキュリティ業者をはるかに出し抜いて、個人、企業を問わず顧客を確保できる状況がそこにあった。当然ながら紅客ビジネスは詐欺的状況を呈することになる。また「灰鳩子」や「終結者」など、さしたる技術力なしに扱える有料のトロイの木馬セットを、マルチ商法的に販売するスタイルが普及するにつれ、ハッカー志望の若者らの憧れの的だったかつての「紅客」は、セキュリティ詐欺の代名詞のようになってしまった(2011年6月の対ベトナム・フィリピン攻撃の際には、QQ等で一時的に紅客追放キャンペーンが行われたこともある)。

こうした状況は、9月22日に古参ハッカーらが集まり「ハッカーの自律的規約」の確立を目指してCOG情報セキュリティフォーラムが開催されたこととも大いに関連があるのだが、この直後にLionが公開した声明文に「いかなる形でも再編を実行したことはない」「メールアドレスによる(自称紅客メンバーの)確認方法」が記されているのは、紅客をめぐる上記のような現状がその理由にある。

中国紅客聯盟H.U.C(中国紅客網絡技術聯盟)
http://www.cnhonker.com/

(Vladimir)

筆者略歴:infovlad.net 主宰。中国・北朝鮮・ロシアのセキュリティ及びインテリジェンス動向に詳しい
《ScanNetSecurity》

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