SCAN DISPATCH は、アメリカのセキュリティ業界及ハッカーコミュニティから届いたニュースを、狭く絞り込み、深く掘り下げて掲載します。──香港に本社を置くセキュリティ企業のNetwork Box社が、ATMのセキュリティについてのホワイトペーパーを発表した。現在のトレンドである、ATMのWindows化と、レストランやコンビニなどに設置されるいわゆる「キャビネットATM」の増加が、ATM、しいては利用者を危険にさらしていると言う。一昔までのATMは、独自のソフトウエア・ハードウエアと独自のネットワーク・ラインを使っており、安全度は比較的高かった。が、昨今はPC/Intelのハードウエアと、PCに一般的に使用されているOSを使っている「IP-ATM」がその70%を占めるとされており、そのトップシェアをWindows XP Embeddedが占めている。つまるところ、IP-ATM、は普通のIPプロトコルを使う普通のPCに近く、Windowsのセキュリティの脆弱性がほとんどATMにもあてはまることになる。もちろん、ATMは暗号の使用、ファイアーウォールの設置などでセキュリティは万全とうたわれているが、Network Box社のホワイトペーパーによるとそうでもないらしい。トリプルDESを使用して、顧客のデーターの安全の確保をしているといういことだが、今年の1月にNetwork Box社がATMマシーンのネットワーク・トラフィックを分析してみたところ、実際にトリプルDESで暗号化されているのはPINナンバーだけで、PIN以外、カード番号、カードの有効期限、取引金額、残高等の情報は全て平文でやりとりされているという。設置されているファイアーウォールも、非権限アクセスを困難にはするものの、上記の平文情報がATMから送信されていることには変わりない。キャビネットATMのラインにパケット・キャッチャーを設置し、PINナンバーを利用者が入力するところを「ショルダー・サーフィン」(コンピュータ・セキュリティ用語で、利用者の背後から肩越しにPINナンバーの入力などを盗み見すること)する、といったシナリオが簡単に描けてるが、これは2006年に実際に英国で起こった事件そのものである。この事件では、電話のラインにアダプターをつけて、取引をMP3プレーヤーで録音し、全部で3800万円相当が盗まれている。Hack247.co.ukで紹介されている記事では、2006年にATMをテストモードにして行われた犯行のビデオがあった(現在はビデオは削除されている)。Hack247.co.ukhttp://www.hack247.co.uk/2006/10/05/hacking-an-atm-machine/テスト・モードにし、パスコードを入力し、そのATMが扱う紙幣の種類をソフトウエア上で変更し、実際には20ドル紙幣を出金しているにもかかわらず、5ドルや1ドル札であると計算させて、紙幣を引き出す方法のビデオだ。つまり、20ドル札で出金するATMに、紙幣は1ドルだとソフトウエアで変更指定すると、50ドル分の出金に20ドル札を50枚、合計1000ドル分の出金をしてしまう。ブログのコメント欄では、「ATM ユーザー・ガイド・マニュアル」とGoogleするだけで、テスト・モードにする方法が分かるとコメントされている。この犯罪に使われたATMはWindowsベースではないようだが、リスクの低いと言われる独自ソフトウエアのATMでさえ、このような脆弱性が存在していた。WindowsがATMに?と驚いてしまう写真は、ブログMelissa's Adventuresで紹介されている。Melissa's Adventureshttp://melissatogo.blogspot.com/2007/02/multimedia-message.html去年に2月、映画館にあるタッチスクリーンのPCのキャビネットATMに「タスクバー」が現れ、「タスクバー → スタートメニュ → プログラム → アクセサリー → ペイント」とペイント・プログラムを立ち上げ、デスクトップを「PWNED」(米国インターネット俗語で"own"つまり攻略されたの意味)にした、とブログされている。Network Boxは、3つのエリアでのリスクをあげている…【執筆:米国 笠原利香】【関連リンク】Network Box のwhite paper "IP Automated Teller Machine (ATM) Security"http://www.networkboxusa.com/pdflibrary/IPATMSecurity08.pdfNetwork Box社Email: nbhq@network-box.comhttp://www.network-box.com/──※ この記事は Scan購読会員向け記事をダイジェスト掲載しました購読会員登録案内 http://www.ns-research.jp/cgi-bin/ct/p.cgi?w02_ssw