9月11日の米同時多発テロ事件後、乗客選別作業の一環としてコンピュータ機能搭載の顔面スキャナ装置がFresno-Yosemite 国際空港に米国で初めて設置された。乗客はセキュリティ・チェックポイントでデジタルカメラのレンズを覗き込み写真を撮られる。そして、その顔写真と約800 名のテロリストの写真が搭載されているデータベースを照合する。米連邦航空局(FAA)が同空港を顔面スキャナ装置の実験空港に選んだ理由は、同装置のメーカーPelco 社と1.6 キロしか離れていないからだ。尚、試験運用は、3ヶ月間と限定されている。ボストンのローガン国際空港でも1月から同様の試験運用を実施する予定だ。 しかし、空港という公共の場で同装置を使用するにあたり、プライバシー擁護団体等がその技術の精度に疑問を投げかけている。ACLU(米市民自由連合)のBarry Steinhardt 氏は「仮に誤った適合が発生した場合、無実の人々が警察の謂れなき尋問を受けることになるだろう」と懸念を示した。そして、NIST(全米技術標準局)の最新報告書を引き合いに出し、精度の面において同技術がまだ十分に確立されていないことを指摘した。その報告書は、同じ人物を18ヶ月の期間をおいてデジタルカメラで撮影し、その写真を照合した結果、違う人物であるという誤った判定が出た割合は48%にも達したと報告している。 Pelco 社の副社長Ron Cadle 氏によると、同装置の警報が作動するのは一日にごく僅かであり、逮捕に至ったケースはまだない。同社のコンピュータは、顔面の26の照合ポイントを解析し、完全に一致すると10.0 ポイント。セキュリティ担当者による質問を受けるのは、8.0 ポイント以上となっている。