【デジタル時代の著作権(2)〜スターデジオ判決2〜】(弁護士 中野和子) | ScanNetSecurity
2024.04.28(日)

【デジタル時代の著作権(2)〜スターデジオ判決2〜】(弁護士 中野和子)

1. 複製権侵害の主張

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1. 複製権侵害の主張

 本訴訟は、「スカイパーフェクTV」の「第一興商スターデジオ100」という音楽番組において、デジタル信号によって音楽を送信する被告の行為につき、原告である各レコード会社が、自社のヒット曲の送信の差止めと損害賠償を求めた事案です。
 レコード会社は、著作権法上、レコード製作者(音を最初に固定した者)として、著作権に隣接する権利(著作隣接権)を有しているのですが、無断で自社のレコードを複製されない権利(複製権)もその一つです。
 本訴訟は、被告の音楽送信行為が、このレコード会社の複製権を侵害したのではないかを争点とするもので、以下の三点につき、複製権侵害の成否の判断がなされました。

(1)被告の保有サーバにおける複製権侵害の成否
(2)被告による違法な私的複製の教唆・幇助による複製権侵害の成否
(3)受信チューナーにおける複製権侵害の成否

2. 被告の保有サーバにおける複製権侵害の成否

(1)裁判所は、まず、被告が音楽を送信するにあたり、各音源についてのデジタル信号を保有サーバーに蓄積する行為が、本件各レコードの「複製」に該当すると判断しました。
 レコード会社は、1で述べたように、著作権法上、自社が製作したレコードにつき、無断で複製されないという複製権を有しています。ただ、この複製権には、著作権法上、いくつか制限が加えられており、この制限に該当する場合には、レコード会社も複製権侵害を主張することができません。そこで、被告の音楽送信におけるサーバーへのデジタル信号蓄積行為が、レコード会社の複製権が制限されている場合であるかどうかが検討されました。

(2)著作権法上、放送事業者は、レコード会社に対して使用料を支払いさえすれば、レコード会社に無断で、レコード音楽を「放送」することができます(97条)。ところが、音楽の送信が、「放送」ではなく、公衆からのリクエストに応じて音楽を配信するような「自動公衆送信」(リクエスト送信)に該当する場合には、レコード会社の許可が必要とされるのです(96条の2)。
 著作権法上、「放送」とは、「公衆送信のうち、公衆によって、同一の内容の送信が同時に受信されることを目的として行う無線通信の送信」(2条1項8号)とされ、「自動公衆送信」とは、「公衆送信のうち、公衆からの求めに応じ自動的行うものをいう」(著作権法2条1項9号の4)とされていますが、原告は、本件は、受信者が番組のプログラムの範囲内において、都合のよい時間帯に好きな楽曲を受信・聴取できる点から、その実態はリクエスト送信(自動公衆送信)に他ならないと主張していました。
 しかしながら、裁判所は、 著作権法が「放送」と「自動公衆送信」とを明確に区別し、「放送」に該当するか否かの基準を、同一内容の送信が同時に受信されるかどうかという送受信の態様の点のみに求める立場をとっているのであるから、公衆によって同時に受信される本件番組の送信は、リクエスト送信ではなく、「放送」に該当すると判断しました。

(3)著作権法上、放送事業者は、レコードに固定された音楽を放送する際、自らの放送のために、一時的に、そのレコードの音楽を録音したり録画することができます(著作権法102条1項によって準用される44条1項)。すなわち、本来であれば、一時的にせよ、レコード音楽を録音する行為は、まさにレコードの「複製」に該当するのですが、「放送のための一時的複製」は、レコード会社の複製権を侵害しないことになるのです。

中野和子
東京麹町法律事務所
nakano@law.ne.jp

(詳しくはScan本誌をご覧ください)
http://www.vagabond.co.jp/scan/

 
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