>> Scan PREMIUM Monthly Executive Summary 執筆者に聞く内容と執筆方針
【1】前月総括
東京オリンピック・パラリンピックを 7 月に控え、サイバー攻撃報道や脅威情報が増加しているのは気のせいでしょうか。FileZen や ProjectWEB といった政府機関が利用する製品やサービスへの不正アクセスと中国の関係も気になりますが、国際イベントとなればロシアや北朝鮮のサイバー攻撃動向も気になるところです。そんな中、米国の NSA、CISA、FBI および英国の NCSC は、7 月 1 日に、ロシアの GRU(ロシア連邦軍参謀本部情報総局)の傘下の APT グループが、Office365 などのクラウドサービスへのグローバルなブルートフォース攻撃や、Exchange Server への攻撃を実施しているとし、アドバイザリを公開しました。これらの攻撃が、オリンピックを意識してのものであるかは不明ですが、改めて警戒を強める必要があります。
6 月は、中国および北朝鮮の攻撃報道が複数ありました。まず、中国においては、3 月に報じられた SITA(国際航空情報通信機構)へのサイバー攻撃に関する調査結果が、Group-IB 社より報告されており、中国の Winnti グループの仕業であったことが判明しています。
また、中国の APT グループによる ASEAN 諸国へのサイバー攻撃が目立って確認されており、中国の外交政策を含めての動きに注目が集まります。
次に、朝鮮半島の動向ですが、韓国の原子力研究院( KAERI:Korea Atomic Energy Research Institute )は、同研究院内のネットワークへの侵入事案を明らかとしています。KAERI の発表によりますと、攻撃者は VPN 装置の脆弱性を悪用したとのことです。この事案は北朝鮮の APT グループ「 Kimsuky 」によるもので、この他にも複数の韓国の政府機関に対して攻撃を行なっていたことが判明しています。
米中対立は、サイバー空間においても各国を巻き込み、その活動状況は激しさを増しているようにも見えます。こんな状況下において、対応が厄介なランサムギャングによる二重脅迫といった犯罪行為は、一向に止む気配は無く、予断を許さない状況です。なにはともあれ、今月は東京オリンピック・パラリンピックでは何も無いことを祈りましょう。