~マイノリティ・レポート調査がペーパーワークを提出せず
By Iain Thomson in San Francisco
Posted in ID, 7th October 2011 22:16 GMT
米国国土安全保障省(DHS)が、適切なペーパーワーク無しに、行動モニタリングCCTVシステムのテストを行っている。
同プロジェクトに関する2008年のDHS報告書によれば、危険人物検出(FAST:Future Attribute Screening Technology)システムは、高解像度のカメラおよび他の「非侵略的」センサーを使用して、心血管のシグナルやフェロモン、皮膚電位、呼吸量など、人間の行動をモニタするものだ。このデータは次に、地元警察が逮捕すべき人物を特定するマッチングアルゴリズムを実行するコンピュータシステムに送られる。
同システムの原理は、悪意を持つ人々は識別が可能な特定の行動や生物学的な反応を示すというものだ。この考えから、同システムは米国の国境に設置されることになっており、その技術はイスラエルで非常に上手くいっている。イスラエル人は分析するのにソフトウェアに頼るのではなく、人間を利用しているという違いはあるが。
FASTはDHS高等研究局(Advanced Research Agency)の後援により、4年間の開発期間を経て、今夏米国北東部でテストが行われている。しかし、電子プライバシー情報センター(EPIC)により提出された情報公開請求の文書によれば、DHSは人間を実験台にする前に、適切なペーパーワークをまとめるのを怠ったいう。
「既存の法律では、このような新技術を公開する場合、プライバシー影響評価が必要です」と、EPICのオープン・ガバメントコンサルタント、ジンジャー・マコールはThe Registerに語った。「DHSはそれを行っていません。」
「誤検出の確率は非常に高いようで、彼らが示す実効性も70パーセント程度です」とマコールは言う。「かけられる嫌疑の種類を考えると、罪のない大勢の人々が捕まることになります。」
同システムが実際に使用されれば、多くの罪なき人々が捕らえられるかもしれない。現行のテストではしかし、「罪のない人」は存在しない。同テストをよく知るDHSの関係者がThe Registerに語ったところによれば、全てのリサーチは、監視されていることを知っているボランティアを対象に行われたという。分析後は、データが保存されることは無く、被験者個人に結びつけられることも無い。
実際、幸運なボランティアたちには、美味しい軽食までふるまわれており、ここには不正はない。
我々の情報源は、同リサーチ(サーマル皮膚コンダクタンスや心拍数、呼吸、瞳孔の変化、まばたきの変化をモニタ)はごく初期の概念的な段階にあり、実際の配備にはほど遠いと言う。
大量の編集が加えられたテスト報告書を見ると、今年既に、ボストンで行われた2日間のテストランで、およそ200名が同システムを経験したことが分かる。報告書の写真から判断して、広く配備される準備は整っていないが、スキャン・ユニットは今日使用されているミリ波検出器に似ており、同システムはむしろ、比較的閉ざされた空間で使用されたようだ。
FASTの内容が2008年の報告書に詳述されている通りのものであるという前提のもと、DHSの副報道官Peter Boogaardは、The Registerに電子メールで以下のように語った:「ストレスの兆候を検出するための、非侵襲性の生理・行動センサー技術と観察技法を使用する実現可能性を見極めるべく、省の科学技術局が運用環境で予備リサーチを行いました。これらはしばしば、害を及ぼす可能性と結びつけられるためです。」
「FASTプログラムは、調査の準備段階にとどまっており、現時点では、この種のテクノロジーを実現、あるいは利用するという計画はありません。」(原文)
© The Register.
(翻訳:中野恵美子)
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