「諸君! 時は来たようだ」
夏神が立ち上がった。目がらんらんと輝いている。やる気満々だ。
すごくイヤな予感がする。夏神の顔を見ると、相変わらず固いが目が明らかに楽しそうだ。世の中にはぎりぎりの状況、戦いの中で生きている実感を味わうのが好きな人間がいる。こいつもきっとそうだ。
夏神が鋭い目でオレをにらむ。緊急ならメッセージか通話で指示した方が早いだろ。オレは肩をすくめてビールをコップに注ぐ。夏神がオレを怒鳴りつけそうな感じで大きく口を開ける。
今日もどこかで情報漏えいは起きている。
日本には貧困があって底辺の連中は地獄を見てる。知識としては知っていたが、貧困地獄からナマで話を聞かされたのは初めてだ。それに妙に目が据わっていて、瞬きもせずにオレを見つめている。怖い。