2016.09.29(木)

準拠の継続率が低いPCI DSS、カード情報を漏洩した企業の要件6・10準拠は皆無(ベライゾン)

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ベライゾンジャパン合同会社は5月14日、2015年のペイメントカード業界コンプライアンス調査報告書に関する記者発表会を行った。発表された調査結果によると、前年を上回る約6割の企業が何かしらのPCI DSS要件に準拠していたことが明らかになったが、全ての要件をクリアし、完全に準拠している企業は約2割にとどまったという。

調査は、2012年から2014年までの3ヶ年のデータをカバーし、ベライゾンのPCI認定セキュリティ審査員チームが世界30か国以上の企業を対象に実施したPCI DSSアセスメントの結果となっている。

発表を行った同社の事業開発部部長 岡田正人氏は、消費者の69%がデータ漏洩/侵害が見つかった企業の利用を控える傾向にあり、日本国内の消費者はさらにシビアに反応すると話す。その一方で、カード決済の件数と金額が増加傾向にあるだけでなく、決済に関するテクノロジーがモバイルやクラウドなど複雑化する中、攻撃対象は拡大し続けているのが現状だ。

調査報告書にまとめられたのは主に3点。まず、PCI DSSコンプライアンスに完全に準拠している企業の場合でも、持続可能性が低いという点だ。準拠状況の検証に合格した企業を対象に、ベライゾンが12か月以内に再度中間評価を行ったところ、完全準拠を維持していた企業は1/3に満たなかったという。特に要件2の「システムパスワードおよびその他のセキュリティパラメータにベンダ提供のデフォルト値を使用しない」という内容については、再評価時も準拠状態にあった企業は37%まで落ち込んだ。

次に、データ漏洩/侵害が発生した企業は、PCI DSSコンプライアンスの要件6および要件10に問題を抱えていることが明らかになった。セキュアなシステムを維持することが求められる要件6、そしてアクセスを追跡し監視することが求められる要件10の準拠率はそれぞれ64%と76%。ただ、ベライゾンがフォレンジック調査を行った企業の中でデータ漏洩/侵害が発生した時点で2つの要件に準拠していた企業は皆無だったという。セキュアなシステムの維持、アクセス追跡および監視の重要性がデータによって裏付けされた。

3点目は、産業別の準拠状況だ。米国の小売り大手TargetやHome Depotなどの漏洩事件に敏感に反応した小売業界においても、2012~2014年の中間評価でPCI DSSの全ての要件に準拠しているのは全産業平均同様の12%にとどまった。また、決済エコスシテムの中心にある金融サービス業界においては全産業平均に劣る8%、カード決済が多いホテルなどを含む接客業および観光業界は4%という結果になった。カード決済の件数と金額が増加し、データ漏洩/侵害が表面化し続ける現在においても、PCI DSSコンプライアンスを主要なタスクと位置付ける企業は少ないようだ。

PCI DSSに対するアプローチについて岡田氏は、カードデータのリスクを効果的に管理する必要があると説明する。準拠のためのコストや作業負荷を削減するためにも、守るべきデータの範囲を制限することが大切だという。保有するデータの削減と難読化、カード会員データの処理のアウトソーシング、ネットワーク環境の分離など、負担を削減するための対応が必須のようだ。

PCI DSSの準拠状況は、グローバルで見ても日本は最低レベルだと岡田氏は解説する。日本人の監査員もおり、日本語対応もされていることから、言語面での妨げはない。今後は、小売、金融、サービス・観光業界だけでなく、メディア・エンターテインメントや保険業界においても注力すべきコンプライアンスとして、国内企業の注目を集めることができるかに注目したい。
《湯浅 大資》

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