ドメイン管理者が親露軍事政権に ~ 米軍メール誤送信案件 | ScanNetSecurity
2024.05.02(木)

ドメイン管理者が親露軍事政権に ~ 米軍メール誤送信案件

 過去 10 年で、.mil で終わる米軍のアドレス宛の数百万通のメールの送信先が、実際には西アフリカのマリのトップレベルドメインである .ml で終わるアドレスになっていたとの指摘が出ている。

国際
(イメージ画像)

 過去 10 年で、.mil で終わる米軍のアドレス宛の数百万通のメールの送信先が、実際には西アフリカのマリのトップレベルドメインである .ml で終わるアドレスになっていたとの指摘が出ている。

 この 1 文字の打ち間違いのために、医療データ、身分証、軍事基地の地図、移動日程、および軍高官の旅程がわかる予約情報などの送信先が、意図した .mil で終わるアドレスではなく、.ml で終わるアドレスになっていたというのだ。

 だからといって、こうしたメールがすべて .ml で終わるアドレスの受信箱に実際に届いてしまったというわけではない。.mil で終わる正しいドメインに対して、その末尾を .ml に変えたドメインが存在しなければ、そのドメインにメールを送った場合、送信エラーが返ってくるはずだ。それに、末尾を .ml に変えたドメインが実際に存在しても、メールサーバが稼働していなければ、メールは送信できない。しかし、状況はそこまで単純でもない。

 この問題に最初に気づいたのは、アムステルダムに拠点を置いてマリのトップレベル国ドメインの管理を行っている Mali Dili を率いるヨハネス・ズュービアーだ。ズュービアーは、army.ml(陸軍.ml)や navy.ml(海軍.ml)など、マリには存在しないドメインについての DNSリクエストがかなりあることに気づき、こうしたアドレス宛のメールを収集するためのシステムを立ち上げた。

 ズュービアーによると、このシステムで大量のメールを収集できたとのことだ。あまりに大量だったため、このシステムを起動後、すぐにメールの収集をやめたそうだ。ズュービアーは、2014 年と 2015 年に、繰り返し米国政府に対してこの問題について通報しようとしたが、全く相手にしてもらえなかったという。

 ズュービアーは、2023 年 1 月から、.mil 宛のはずが .ml 宛となっていたメールの収集を再開した。米国当局に見せるためである。ズュービアーが Financial Times に語ったところによると、今年これまでのところ、約 11 万 7,000 通のメールが収集できたとのことだ。そこで心配なのが、どこかの悪党か誰かが、そのうち .milドメインに対応する .mlドメインをたくさん登録して、宛先間違いのメールをすべて受信し始めるというシナリオだ。


《The Register》

編集部おすすめの記事

特集

国際 アクセスランキング

  1. Tor の出口ノードがダウンロード時にマルウェアを混ぜ込む~Windows Update のハッカーは Microsoft FixIt に守られる(The Register)

    Tor の出口ノードがダウンロード時にマルウェアを混ぜ込む~Windows Update のハッカーは Microsoft FixIt に守られる(The Register)

  2. ユナイテッド航空を使う? スマートフォンでパスポートをスキャンできるなら、それは素晴らしいことだ~しかし米運輸保安局のために紙の版も鞄に詰めておくこと(The Register)

    ユナイテッド航空を使う? スマートフォンでパスポートをスキャンできるなら、それは素晴らしいことだ~しかし米運輸保安局のために紙の版も鞄に詰めておくこと(The Register)

  3. 米国、英国のプライバシー監視機関が政府の監視を抑制する法的訴訟を提起~プライバシープロテクターが最高裁判所と英国裁判所に NSA、GCHQ の抑制を請願(The Register)

    米国、英国のプライバシー監視機関が政府の監視を抑制する法的訴訟を提起~プライバシープロテクターが最高裁判所と英国裁判所に NSA、GCHQ の抑制を請願(The Register)

  4. 音楽認識アプリ Shazam 、終了しても録音継続 ~ 開発元:「仕様です」 「重大なリスクはない」 (The Register)

  5. ロボット三原則、銀河帝国の興亡 ~ 生誕100年 アイザック・アシモフの残した今も生きる警鐘(The Register)

  6. 情報セキュリティ産業はいまだに男子校状態 「後編:壊れたハシゴ」

  7. 訃報「伝説のハッカー」ケビン・ミトニック氏 59歳

  8. ボーイング、部品流通事業へのサイバー攻撃発生を認める

  9. インターネットアーカイブが出版大手四社に破壊される可能性

  10. 悪夢の検証 大英図書館ランサムウェア ~ 過ちが語る普遍的な物語

アクセスランキングをもっと見る

「経理」「営業」「企画」「プログラミング」「デザイン」と並ぶ、事業で成功するためのビジネスセンスが「セキュリティ」
「経理」「営業」「企画」「プログラミング」「デザイン」と並ぶ、事業で成功するためのビジネスセンスが「セキュリティ」

ページ右上「ユーザー登録」から会員登録すれば会員限定記事を閲覧できます。毎週月曜の朝、先週一週間のセキュリティ動向を総括しふりかえるメルマガをお届け。(写真:ScanNetSecurity 名誉編集長 りく)

×