>>第 1 回から読む
犯人は、終始にこやかに対応し、誓約書にサインもした。
「事務所を引っ越すんです。おかげさまでね」
犯人は、そう言うとマンションの出口まで、オレを送ってくれた。
「中山に、警察に逮捕されることはないから安心しろ。その通りですと認めて謝れば簡単に終わる、と余計なことを教えたのが裏目に出ました。今回、工藤さんが警察に情報を渡さないことを知っている人間は限られますからね」
川原は、肩をすくめて見せた。下手なジェスチャー。唯一の失点だ。
「中山はどうした?」
「どこかに逃げたんでしょう。ここには来ていません。彼は、僕のメールアドレスしか知りませんからね。工藤さんに気づかれたので助けてほしい、とメールが来ましたが無視しました。逃げる必要なんてないのに」
オレは、それ以上聞かなかった。川原に背中を向けると、そのままそこを立ち去った。
事件は解決し、クライアントの思い通りの成果が得られたにもかかわらず、オレの気分は最低だった。理由は言わなくても、わかるだろう。試合に勝って、勝負に負けたってヤツだ。
オレは、ファミリーアイズの相沢に電話し、犯人を特定し、始末をつけたことを伝えた。そして、そのまま家に戻ると、一晩かけてレポートを作り上げた。こんな事件は、とっとと忘れてしまいたい。
翌朝、朝一番でレポートを届けると、相沢はいつもの無愛想な表情で迎えてくれた。こいつは一生、この顔のままなんだろう。
レポートを渡して、ひととおり説明すると、相沢にしては珍しくバカな突っ込みを入れずに黙ってうなずいていた。
「というわけ。詳しくは報告書に書いてある通り」
「ありがとうございます。無事に解決しましたね。さすがです。おみそれしました」
犯人は、終始にこやかに対応し、誓約書にサインもした。
「事務所を引っ越すんです。おかげさまでね」
犯人は、そう言うとマンションの出口まで、オレを送ってくれた。
「中山に、警察に逮捕されることはないから安心しろ。その通りですと認めて謝れば簡単に終わる、と余計なことを教えたのが裏目に出ました。今回、工藤さんが警察に情報を渡さないことを知っている人間は限られますからね」
川原は、肩をすくめて見せた。下手なジェスチャー。唯一の失点だ。
「中山はどうした?」
「どこかに逃げたんでしょう。ここには来ていません。彼は、僕のメールアドレスしか知りませんからね。工藤さんに気づかれたので助けてほしい、とメールが来ましたが無視しました。逃げる必要なんてないのに」
オレは、それ以上聞かなかった。川原に背中を向けると、そのままそこを立ち去った。
事件は解決し、クライアントの思い通りの成果が得られたにもかかわらず、オレの気分は最低だった。理由は言わなくても、わかるだろう。試合に勝って、勝負に負けたってヤツだ。
オレは、ファミリーアイズの相沢に電話し、犯人を特定し、始末をつけたことを伝えた。そして、そのまま家に戻ると、一晩かけてレポートを作り上げた。こんな事件は、とっとと忘れてしまいたい。
翌朝、朝一番でレポートを届けると、相沢はいつもの無愛想な表情で迎えてくれた。こいつは一生、この顔のままなんだろう。
レポートを渡して、ひととおり説明すると、相沢にしては珍しくバカな突っ込みを入れずに黙ってうなずいていた。
「というわけ。詳しくは報告書に書いてある通り」
「ありがとうございます。無事に解決しましたね。さすがです。おみそれしました」