海外における個人情報流出事件とその対応「PayPalハッキングで金塊を購入」 (1)日本円で2,000万円近い被害額 | ScanNetSecurity
2024.04.26(金)

海外における個人情報流出事件とその対応「PayPalハッキングで金塊を購入」 (1)日本円で2,000万円近い被害額

●PayPalハッキングで金塊を購入
「“プロ”のハッカーがeBay利用者から18万5,000ポンド(約2,486万円)以上を盗み、懲役刑となっている」と、2月21日付け「The Register」が報じた。記事は「This is Nottingham」の報道に基づくものだ。

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●PayPalハッキングで金塊を購入
「“プロ”のハッカーがeBay利用者から18万5,000ポンド(約2,486万円)以上を盗み、懲役刑となっている」と、2月21日付け「The Register」が報じた。記事は「This is Nottingham」の報道に基づくものだ。

逮捕されたのは22歳の男性、Richard Kirkだ。英国中部、マンチェスターの南東にあるノッティンガムで母親と一緒に暮らしていた。Kirkは300件を超えるeBayユーザのパスワードを不正に獲得した後、メールアカウントにハッキング。eBayの子会社で、決済サービスを提供するPayPalアカウントに不正にアクセスしていた。eBayは世界最大規模のオークションサイトだ。

そして、被害者のPayPalアカウントから、Kirk個人の口座に送金して、金の延べ棒、金のジュエリー、ミツビシの自動車をはじめとする高額の品物を購入していた。Kirkは送金目的に数百件のPayPalアカウントを開設していたとされている。

PayPalの利用者はアカウント開設時に住所も登録する。しかし、Kirkが購入した高額製品はすべて登録住所ではなく、Kirkの住所に送付されていた。

アカウントがハッキングされた場合は、PayPalは元のアカウントの持ち主に資金を払い戻す規定がある。ただし、不正にアカウントを使用して購入した品物が、PayPalのユーザアカウントとして登録されているのとは異なる住所に送られた場合は、払い戻しは行われない。そのため、アカウントが不正使用されたことに気付いたとしても、PayPalユーザは大きな打撃を受けた。

●日本円で2,000万円近い被害額
今回の事件では、被害金額18万5,000ポンドのうち、不正な購入に使った金額は14万3,000ポンド(約1,917万円)とされている。一方、PayPal側も約4万ポンド(約536万円)について回収できなかったという。通常、これはKirkが購入した品物の出品者は、販売後その売り上げをPayPalの口座から移していたためだ。

事件の被害者の多くはノッティンガムや、ノッティンガムに近いマンスフィールドに住んでいたeBay利用者だ。しかし、オーストラリアやスウェーデン在住者も被害を受けている。

Kirkが不正アクセスして悪用したアカウントのひとつは、重病で余命わずかな子どもたちのための、特別な学校のものだったらしい。学校は、子どもたちの想い出の品や記念の品物などを販売するWebサイトを持っていたが、KirkはそのWebサイトを通じて金塊を販売していた。しかし、3,000ポンドでの売買に合意した後も、買い主に対して金塊を送っていないというから、インターネット詐欺も行っていたようだ。「This is Nottingham」の記事では、5件の罪状で有罪判決を受けている。

Kirkの逮捕は、被害者の一人が異常に気付いて警察に通報したことによる。警察は金が届けられた直後にKirkの自宅に踏み込んだと報じられているが、逮捕の際、Kirkは不正に使用した他人のPayPal残高で購入した品物に囲まれて、ノートPCを使用していたというから、サイバー犯罪に忙しかったのかもしれない。

報道で“プロのハッカー”と形容されているのは、Kirkが毎日、数時間をかけて他人のアカウントを攻撃して、残高に不正にアクセスしていたためだ。数百件にものぼるアカウントが被害を受けていた。

Kirkがハッキングで盗難を行っていたのは2008年から2010年までの間とされている。不正な資金で購入した品物を自宅に送付していたのに、2年もの間、逮捕されなかったのは驚きだ。裁判でKirkは懲役3年半の有罪判決を受けた。


(バンクーバー新報 西川桂子)
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