エージェント不要の C2 サーバ「MDMatador(マタドール)」とは? | ScanNetSecurity
2024.05.15(水)

エージェント不要の C2 サーバ「MDMatador(マタドール)」とは?

ITシステムおよびセキュリティプラットフォームを提供するFleetが、MDMプロトコルを利用した興味深いツールを公開している。標的システムにバックドアやエージェントプログラムをインストールしなくてもMDMサーバーをC2サーバーのように悪用できるというものだ。

研修・セミナー・カンファレンス
MDMatadorのダッシュボード画面
  • MDMatadorのダッシュボード画面
  • 発表チーム
  • 悪意のMDMサーバーの検知ポイント
  • C2サーバーの構成
  • エージェントレスC2に使える技術は?
  • MDMのシステム構成
  • CVE-2023-38186の攻撃フロー
  • このような簡単なSyncMLでDefenderを無効化できる

 IT システムおよびセキュリティプラットフォームを提供する Fleet が、MDM プロトコルを利用した興味深いツールを公開している。標的システムにバックドアやエージェントプログラムをインストールしなくても MDM サーバを C2 サーバのように悪用できるというものだ。

 C2 サーバ(以下 C2)の実体は、通常標的システムの外にあるクラウドインスタンスやホスティングサービス、あるいはボット化されたサーバである。標的システムや PC には C2 からの指令を実行するエージェントが存在しなければならない。

 だが、Fleet のセキュリティエンジニアが発見した MDM プロトコルの特権昇格に関する脆弱性(CVE-2023-38186)を利用すれば、エージェント不要で外部から攻撃が可能になる。詳細は Fleet のホームページでも公開されてはいるのだが、2023 年の BlackHat USA において、PoC を実装したツールのデモを伴う発表も行われた。なお、Fleet はオープンソースプラットフォームをサブスクリプションで提供する普通のテック企業である。アンダーグラウンドや Pegasus(スパイウェア)を各国政府に販売している(とされる)NSO のような会社というわけでは断じてない。この発表は彼らの研究開発活動の成果のひとつである。

● エージェントレス C2 への挑戦

 C2 は、APT 攻撃において攻撃者からワンクッションおいた司令塔として不可欠な存在だ。RaaS のような攻撃プラットフォームにおいても重要なインフラのひとつになることもある。C2 を司令塔たらしめるのは標的に忍ばせた隠密であり間者(エージェントプログラム)のなせる業でもある。しかし、エージェントベースの攻撃にはいくつかの条件がある。

 まず、システムのセキュリティ機能、監視機能によるエージェント検知を回避しなければならない。その隠密活動を維持するための活動、エージェント(プログラム)のメンテナンスやアップデートが継続的に必要になる。これを実現する機能は、エージェント側にも必要だが、標的セキュリティシステムの監視の目をそらすための措置、防御機能の無効化も必要になる。

 Fleet の開発チームでセキュリティも担当するマーカス・オヴィエドは、エージェントを使わず C2 からの指令を実行させる方法はないかと考えた。たとえば、既存の正規通信や標準プロトコルを利用すれば、C2 からの指令を潜り込ませることができるのではないか。つまり、プロトコルや正規機能の悪用(Abuse)である。

 オヴィエドや彼のチームが、なぜそのようなことを考えたかのか。


《中尾 真二( Shinji Nakao )》

編集部おすすめの記事

特集

研修・セミナー・カンファレンス アクセスランキング

  1. 毎年同じ年中行事化した診断から、予算を効果的に配分する濃淡をつけた診断へ ~ AeyeScan「診断マネジメントプラットフォーム」

    毎年同じ年中行事化した診断から、予算を効果的に配分する濃淡をつけた診断へ ~ AeyeScan「診断マネジメントプラットフォーム」

  2. 「引っかかるのは当たり前」が前提、フィッシングハンターが提案する対策のポイント ~ JPAAWG 6th General Meeting レポート

    「引っかかるのは当たり前」が前提、フィッシングハンターが提案する対策のポイント ~ JPAAWG 6th General Meeting レポート

  3. Google & 米Yahoo! の迷惑メール対策強化について~ JPAAWG 緊急ウェビナーで喫緊課題への具体的な疑問が続出

    Google & 米Yahoo! の迷惑メール対策強化について~ JPAAWG 緊急ウェビナーで喫緊課題への具体的な疑問が続出

  4. トレーニング 6 年ぶり復活 11/9 ~ 11/15「CODE BLUE 2024」開催

  5. パナソニック他 大手が続々「Cloudbase」を採用、日本人が日本企業のために作るクラウドセキュリティプラットフォーム

  6. 新しい総務省ガイドラインに適合する「クラウドのデータ消去」とは? 自治体で行われた実証実験 結果報告

  7. IT を「使う」から「作る」まで ~ 「HCL BigFix」「HCL AppScan」でできること

  8. 超音波サイバー攻撃技術「ソニックガン」、中国ハッカーが公表

  9. 「イエラエが、今、SOCサービスを始める意義」とは? 「IERAE DAYS」トークセッションレポート公開

  10. SECON 2024 レポート:最先端のサイバーフィジカルシステムを体感

アクセスランキングをもっと見る

「経理」「営業」「企画」「プログラミング」「デザイン」と並ぶ、事業で成功するためのビジネスセンスが「セキュリティ」
「経理」「営業」「企画」「プログラミング」「デザイン」と並ぶ、事業で成功するためのビジネスセンスが「セキュリティ」

ページ右上「ユーザー登録」から会員登録すれば会員限定記事を閲覧できます。毎週月曜の朝、先週一週間のセキュリティ動向を総括しふりかえるメルマガをお届け。(写真:ScanNetSecurity 名誉編集長 りく)

×