ScanNetSecurityの存続をかけて駆け回った2010年から約1年後の2011年8月某日、私は、引退後の悠々自適生活を送る初代創業編集長の原隆志さんに会うため北海道の札幌市にいました。
上野さんに編集長就任をお願いすることにした理由は、風貌がピエール瀧に似ていたこと、ビジネスの軸がしっかりしていたことの2点です。「法律を守る闇金」こと投資ファンドに会社が乗っ取られた現状では、彼がピッタリだと私は考えたのです。
TOBが成立し投資ファンドから派遣された新経営陣の印象は「法律を守る闇金ウシジマくん」といえばうまく伝わると思います。丑嶋社長が法律を守るなら普通にヒーローじゃないか、という声が聞こえそうですが、まさにその通りでした。一緒に働く相手として楽ではないですが。
もともと、収支トントンで維持していたScanNetSecurityだったので、キャッシュアウトはないものの、帳簿上は毎月200万円近い赤字を計上するスタートとなりました。
2006年9月にサイボウズ・メディアアンドテクノロジー社が設立され、土屋さんが社長に就任、その後、2009年3月にScan事業が3回目のM&Aでバリオセキュア・ネットワークス社(当時)に売却されるまでの3年間は、Scanは事業としては踊り場にありました。
ライブドアがITベンチャー史上最大規模の挫折を経験した会社だとすると、サイボウズはその正反対でした。ScanがM&Aされた夏にサイボウズ社は東京証券取引所一部に上場市場を変更しており、挫折のないベンチャーが持っている快活さや風通しのよさにあふれていました。
ライブドアが強制捜査を受けて以降、経営陣逮捕、上場廃止とつづく中で、Scanを運営していたネットアンドセキュリティ総研社は5月にグループウェアの大手企業サイボウズ社に早々と売却されました。
強制捜査の最中に、社内で堀江貴文社長とすれちがったのを覚えています。ちょっとうわずった感じではあったものの、堀江さんはいつもどおり「おつかれさまです」と私に声をかけてきました。
オフィスはまだ人もまばらな時間帯でしたが、その朝は少し変わったことが起きていました。ポータルサイトのメディア統括事業部の、部長クラスの人物が、急にその日の朝に、退職届を出したというのです。
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