[特別連載] スティーブン・ポール・ジョブズの人生と時代 第1部 第7回 | ScanNetSecurity
2024.04.19(金)

[特別連載] スティーブン・ポール・ジョブズの人生と時代 第1部 第7回

スティーブン・ポール・ジョブズの人生と時代 第1部 第7回
?小学校の暴れん坊からiMacによる復活へ

国際 TheRegister
スティーブン・ポール・ジョブズの人生と時代 第1部 第7回
~小学校の暴れん坊からiMacによる復活へ

By Rik Myslewski in San Francisco
Posted in PCs & Chips, 6th October 2011 01:57 GMT

胴体着陸

1993年はスティーブ・ジョブズの経歴で、おそらくは最低の時期だった。いや、言い直そう。1993年はまさしく、スティーブ・ジョブズの経歴で最低の時期だった。

この年2月のFortuneの記事が、当時業界がジョブズに対して感じていた相反する感情を明らかにしている。「時々、スティーブ・ジョブズが詐欺師なのか、それとも善意の空想家なのか分からなくなる」と同誌は言う。「ついているプロモーターなのか、それとも大胆不敵な企業家の典型なのだろうか。」

同記事は続けて、NeXTを救うための、ジョブズの最後の努力に触れている。ジョブズはNeXTStepオペレーティング・システムを、Intel 486プロセッサ上で動作させ(当時NeXTボックスはMotorola 68030および68040上で動作していた)、そして同オペレーティング・システムを他の企業にライセンスすることで、会社を立て直そうとしていたのだ。この移植版はNeXTStep 486という名で、1月のNeXTworld Expoで発表されていたが、まだリリースされていなかった。

ジョブズは「分かってもらうには、いつも1度じゃ済まなかった」と言ったという。「Apple Iについて耳にしたことも無かったんだから」

当時、ジョブズはマイクロソフトのCairoプロジェクトと、アップルとIBMによるTaligentの取り組みが、NextStepの主要な競合と考えていた。しかし後者については、あまり心配していなかった。「アップルには1000人のソフトウェア技術者がいる」と、彼はFortuneに語っている。「Taligentが自分達の敵であることに気づいている技術者がね」 IBMは、と彼は続ける。「紙袋から自分達のやり方を取り出して、啓蒙することができないんだ。」

NextStep Release 3のデモ動画

NeXTStepのこのデモで、ジョブズは1980年代に設計を手助けしたコンピュータを軽く批判している。



この時までに、NeXTの大部分の上級管理者は去るか、クビを切られるかしていた。共同創設者のバド・トリブル、リッチ・ペイジ、スーザン・バーンズ(順にソフトウェアの長、ハードウェアの長およびCFO)、マーケティング担当副社長マイク・スレード、販売担当副社長トッド・ルーロン-ミラー、マーケティング・マネージャーのジェフ・スパイラーなどだ。「時には、5年前に雇った人々が、今後のために望ましい人物ではない、ということがある」とジョブズは語った。「その人が個人的にどうこうということではなく、だ。」

その前年、ジョブズは頑固なイギリス人、Peter van Cuylenburgを口説きおとし、NeXTの社長兼COOとして獲得しており、NeXTの17.9パーセントの株を持つ投資者キヤノンを喜ばせた。彼の在任期間は短かった。

長らくNeXTを支えた人々を閉め出した後、(「私は会社にプレッシャーを掛けたが、全員がそれを受け入れるのをいとわなかったり、受け入れることができたわけではなかった」とジョブズはFortuneに語っている。)1993年3月に、自分はクビか、辞任か、あるいはその両方で、NeXTを離れるとvan Cuylenburgは発表した。

van CuylenburgはInfoWorldに語った:「スティーブ(ジョブズ)は、会社の実権を取り戻したかったのです。私がすべき意義ある仕事はありませんでした。」

NeXTを去る前に、van Cuylenburgはジョブズの意向に背いてSunのスコット・マクニーリーに電話し、彼にNeXTを買い、CEOに任命して欲しいと頼んだ、という未確認のレポートがある。本当かどうかは別として、SunはNeXTを救わなかった。

NeXT logo

ジョブズはNeXTのロゴに100,000ドル支払った…


ジョブズがNeXTのソフトウェアとハードウェア双方のプランを検討しているというFortuneの記事が出たのと同じ日に、InfoWorldが、以下のように始まる1面記事を掲載した:「情報筋によれば、Next Computerはワークステーションラインの製造を停止し、多数の従業員を解雇して、ソフトウェア企業に転身する予定だという。」

2月10日、ジョブズはこの噂を認めた。キヤノンが同社のハードウェアビジネスを買収した。同社はそれまでに現金で1億2000万ドル、債務で5500万ドルの投資を行っており、買収額は明らかにされていない。残っていたNeXTの従業員530人のうち、230人が解雇され、他の100名はキヤノンに異動。残りの200名がNext Softwareに留まった。

ジョブズはハードウェアビジネスを手放したことに、ポジティブな解釈を与えようとした。「今後数年、懸命に仕事をすれば、優良な準大手のハードウェア会社になれるだろうということは分かっている」と、彼はThe New York Timesに語っている<。「だが…我々にはソフトウェア企業のトップになるチャンスがあるんだ。」

ハードウェアを手放し、NeXTソフトウェアのみにフォーカスするというジョブズの計画をリークしたInfoWorldの記事で、あるアナリストが次のように語ったと伝えられている:「これはおそらく、ジョブズがこれまでに行った初の、真に賢いビジネス決定だ。」 そして彼が正しかったことは証明された。想像もしていなかったような方法で。

NeXTStep logo

…しかし実質的に、NeXTStepのロゴは安くついた


5月25日、サンフランシスコのNextWorld Expoで登場したNeXTStep Release 3.1は、NeXTがMultiple Architecture Binaryと呼ぶものを採用し、MotorolaとIntelの命令セット双方を両方サポートしていた。Intel向けのインストールは、Pentiumのサポートが追加されたことで、NeXTStep 486から改名され、Release 3.1 for Intel Processorsとして知られるようになった。

ジョブズは人前で好調な様子を見せようとしたが、彼の気持ちはハードウェアにあった。そして彼は、アップル創始者としての自身の在職期間が、まぐれではなかったことを証明しようと、すっかり減ってしまった財産のうち数百万ドルをNeXTに投資した。

キヤノンは9月15日、今日有名な競売を行った。NeXTのオフィス家具、製造ロボット、カフェテリアの備品、そして売れ残りのNeXTコンピュータが激安価格で売却され、ジョブズのハードウェア時代は、永遠に終わりを告げたと思われた。

その翌月、ジョブズはまたもや打撃を受ける。ピクサーのクリエイティブたちが11月19日、ディズニーのお偉方向けにトイ・ストーリーの進捗具合を上映して大失敗し、ディズニーの長ジェフリー・カッツェンバーグは、ジョブズがおそらくはピクサーの救いとなることを期待していた同フィルムの開発を停止したのだ。

「どれだけ修正したところで」とディズニーのアニメーション部門チーフ、ピーター・シュナイダーは彼らに告げた。スクリーニングで示された、主役2人のキャラクターが不快だとし、「この映画は上手く行っていない。」

スティーブ・ジョブズにとって、1993年のクリスマスは楽しいものではなかった。(原文

© The Register.


(翻訳:中野恵美子
略歴:翻訳者・ライター
《ScanNetSecurity》

Scan PREMIUM 会員限定記事

もっと見る

Scan PREMIUM 会員限定記事特集をもっと見る

カテゴリ別新着記事

「経理」「営業」「企画」「プログラミング」「デザイン」と並ぶ、事業で成功するためのビジネスセンスが「セキュリティ」
「経理」「営業」「企画」「プログラミング」「デザイン」と並ぶ、事業で成功するためのビジネスセンスが「セキュリティ」

ページ右上「ユーザー登録」から会員登録すれば会員限定記事を閲覧できます。毎週月曜の朝、先週一週間のセキュリティ動向を総括しふりかえるメルマガをお届け。(写真:ScanNetSecurity 名誉編集長 りく)

×