昼になると、オレは眠くて仕方がなかった。
「お疲れ様です」
弁当を買いに行っていた葛城が会議室に戻って来た。
「眠そうですね。はい、ご希望のハンバーグ弁当です」
オレは葛城から弁当を受け取った。
「罠を張った甲斐があったよ。証拠は揃った。和田のパソコンからのサーバへのアクセス記録が残ってた。和田のパソコンには、ごていねいに脅迫に使われた暗号化された顧客情報もあった。それに決定的なのは、監視カメラの記録だな。ばっちり犯行現場が写ってた」
「予想以上の収穫ですね。几帳面なのが裏目に出ましたね」
オレはうなずいた。
「そうそう、身体検査の速報が来たんだ。これから独り言を言うぜ。訊きたいことがあったら、あんたも独り言を言うんだ」
オレが言うと葛城は不安そうな表情を浮かべた。
「えーとさ。家のローンや車のローンはあるヤツ多いね。あと、カードローンもみんなやってる。ただ、ちょっと多すぎるのが二人いた。和田と遠山だ。和田は150万円ちょっと。遠山は450万円。多いよな。借金っていうのは400万円越えてくると、いわゆる危険水域なんだ。500万円越えたら、確実にヤバイ。今のところは街金とかヤバイ筋はないね。ざっと調べた範囲では、ヤクザとの接点はないみたいだ。でも、遠山に関してはクスリの可能性があるってさ。よく出入りしてるクラブがそっちでは有名なとこなんだって」
オレが弁当を食いながら独り言を言うと、葛城は唖然とした顔をしていた。
「クスリ?」
「独り言を言え」
「なんでクスリなんかするのかなー?」
オレは葛城の下手な芝居に噴き出しそうになった。
「クスリは簡単に手に入るんだよ。クラブとか、ライブハウスで、素人が売人をやってたりする。錠剤とか、チョコとか、金魚の形の醤油入れとか、クスリとは思えないような形で売ってるんだ。最初はタダでくれたりするしね。クスリとは知らずにやって、ずるずると抜けられなくなるっていうよくあるパターンなんだろうなあ」
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